日本でバカ売れ「高級チョコレート店」の本音 フランス人職人は日本ではスター扱い

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1月に日本へ進出したフランスのチョコレート専門店「アルノー・ラエール」の店頭には、さまざまなチョコレートが並ぶ(写真:アルノー・ラエール提供)

第1次世界大戦直後の1918年、日本にフランス商工会議所が設立された。それから100年経った今、日本に多くのフランス企業が進出し、フランス人が働くようになっている。今の日本は、フランスにとってどんな「市場」なのか。フランス商工会議所と協力し、フランス企業やフランス人ビジネスピープルの本音に迫る。第1回は、日本で過熱するチョコレートブームに対するフランスのチョコレート職人たちの本音を聞いた。

当記事は、在日フランス商工会議所の提供記事です

32歳の天才パティシエ、ジェローム・デ・オリヴェイラ氏は称賛には慣れているはずだった。2009年に、彼は23歳にして「パティスリー世界大会チャンピオン」となり、今日の洋菓子界で最も輝く才能を持った職人の1人と考えられている。

それでも、新宿で開催された三越伊勢丹主催の「サロン・デュ・ショコラ2018」に初参加したときに受けた、ありえないほどの熱狂的な歓迎には茫然とさせられた。

9日有給を使って連日訪れた女性も

「初日、オープンから1時間もしないうちに、私のチョコレートを模したネイルを施した若い女性が来てくれた。2日目には、初日に私のチョコレートを1箱買ってくれた女性が、私のチョコレートについての詳細で分析的レビューを持って再び来てくれた」とオリヴェイラ氏。

「たくさんの手紙や絵もファンからいただいた。多くの人は、私と記念写真を撮りたがり、購入したチョコレートの箱にサインを求めてきてくれた。中には、ルイ・ヴィトンのバッグやiPhoneのスクリーンにサインを求める人も。お得意様の1人は、年間15日しかない有給休暇を、私に会うためだけに9日も使ったそうだ」

そして、オリヴェイラ氏はこう付け加えた。「チョコレート職人がロック・スターか聖人のように扱われる国は日本だけ。私はそのような称賛や敬意にはふさわしくない。父はフランスで消防士をしているが、彼こそが敬意を受けるのにふさわしい」。

今年で16回目を迎えたサロン・デュ・ショコラには、多くのフランス人を含む約30人の外国人チョコレート職人が参加。その誰もが、日本人のチョコレートに対するほとばしる情熱に驚いている。

「私は日本を熱愛している。こんな国はほかにない」と話すのは、ショコラ専門店「chokola」を展開するチョコレート職人のセバスチャン・ブイエ氏だ。彼は、日本のチョコレート市場を開拓した1人で、この10年で4回来日。現在は5店舗を日本で展開しているだけでなく、日本人の弟子の多くをフランスにも連れていっている。

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