「3人の去就」が日本株に大きな影響を与える 企業業績は安定、今年は配当増ラッシュに?

拡大
縮小

日本の企業全体でみても、「新しい時代」を迎えています。

2003年以降の法人企業統計を見てみましょう。銀行への公的資金投入で底を打った企業業績は、2003年に売上高1335兆円(前期比0.6%増)、経常利益36兆円(同16.8%増)の増収増益となりました。この増収増益傾向は2006年まで続き、同年の売上高は1566兆円、経常利益54兆円となりました。

しかし、2007年の売上高は、円安傾向に皆が「浮かれて」1580兆円に伸びましたが、経常利益が53兆円と若干の減益になりました。今考えれば、直後の2008年9月に起きたリーマンショックの危険シグナルが微妙に出ていた感じです。企業単位では増収減益はよくあることですが、日本全体の企業で「増収減益」になると言うのはやはり異常をきたしていたということです。

2018年は「増配ラッシュ」の年になる?

大きく落ち込んだ企業業績は、2013年のアベノミクス登場で、売上高1409兆円(前期比2.5%増)、経常利益60兆円(同23.1%増)と回復し、2014年も連続増収増益となりました。しかし、2015年は売上高が1.1%減と変調を来たし、結果的に株価は2015年高値となりしばらくそれを抜けなかったのはご承知の通りです。

それでも2016年は売上高1456兆円(前期比1.7%増)、経常利益75兆円(同9.9%増)と増収増益体勢が戻り、2017年も売上高1497兆円(同2.7%増)、経常利益76兆円(同6.6%増)と連続増収増益になりました。経常利益の76兆円は過去最高です。そして2018年も増収増益予想で、3期連続となるのはほぼ確実です。

このように見ると、企業業績も本格的な安定期に入ってきたことを実感するでしょう。しかも、企業は膨大な内部留保を積み上げ、ガバナンス面からも今その資金を使わなければならない時に来ています。ここ数年、新規投資先が見つからない企業は「自己株買い」で企業価値を高めて来ました。しかし2017年後半のように株価が急騰すると自己株買いの効率が悪くなる企業も出て来ます。

つまり、自己株買いよりも新規投資で企業価値を高める方が良いということです。AI(人工知能)、IoT(モノのインターネット)、EV(電気自動車)など、新規投資のすそ野は膨大ですが、それでも慎重な企業は、ガバナンスにのっとり総配当性向(株主還元率)は維持しなければなりません。自己株買いによる株主還元が難しくなってきたら、もう1つの株主還元「配当増」によって企業価値を高めることになります。その意味で、2018年は増配ラッシュの年になるかも知れません。株式投資にとって妙味のある2018年が始まりました。

平野 憲一 ケイ・アセット代表、マーケットアナリスト

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

ひらの けんいち

日本証券アナリスト協会検定会員。株一筋約45年。歴史を今に生かすことのできる「貴重なストラテジスト」として、テレビ、ラジオ、新聞、雑誌への出演や寄稿記事多数。的確な予想で知られ、個人投資家の間には熱烈な「平野ファン」がいることでも有名。1970年に立花証券入社以来、個人営業、法人営業、株ディーラーを経て、2000年情報企画部長マーケットアナリストとして、投資家や各メディアに対してマーケット情報発信をスタート。2006年執行役員、2012年顧問就任。2014年に個人事務所ケイ・アセット代表。独立後も、丁寧でわかりやすい解説を目指す。

この著者の記事一覧はこちら
関連記事
トピックボードAD
マーケットの人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT