日本の観光業がハワイに学ぶべき3つのこと 気候や自然だけが人気の理由ではない

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3. 文化や自然に関心の高いリーダーがいる

ハワイが好きな日本人が多い理由には、ハワイの恵まれた気候や自然が挙げられると思いますが、日本と同じ島国だから、ということも日本人に「親近感」を抱かせているのではないでしょうか。

一方、ハワイは日本と異なり、移民が多く、多民族がともに暮らしている島でもあります。こうした中、ハワイの人々は先住民に対して敬意を払いながら、それを伝承し、広めていく活動に力を入れています。たとえば、先住民の文化であるフラは、今や日本を含め世界中に愛好家がいますし、先住民が始めた「アロハフェスティバル」の運営は、現在、夫が会長を務めるビジネス協会WAIが行っています。

「日本ファン」のリーダーを増やすべきだ

このイベントをWAIが受け継いだ当初は赤字でしたが、「ハワイの伝統文化を伝え、守ることは必要」との判断から継続。「ハワイアン文化を伝えると同時に、ハワイの多様な習慣と伝統をたたえることによって、アロハスピリットを育成する」ことを目標に掲げ、ハワイ州最大のお祭りへと発展させました。日本文化との融合もハワイでは多く見られ、たとえば、「まつりインハワイ」は、日本の祭りをハワイに広めるために毎年開催されている、地元民にも人気の高い文化交流イベントです。

ただ、こうした文化を継承し、守るためにはリーダーシップと多くの資金が必要ですが、ハワイでは幸いなことに、WAIのようなビジネス団体や企業、財団などが支援や寄付を行っており、ハワイの文化を守ることに力を入れています。

前述のHTA主催のサミットにも、ホスピタリティ協会や財団、文化団体などの幹部が出席。「ハワイ文化をどう守り、観光業に結びつけるか」というテーマのセッションが行われました。ここでは、ハワイの伝統文化をどう継承するかについてだけではなく、各国での伝統文化と観光業の融合例や、各国の先住民が観光業を通じてどのように経済的立場を向上させているかなど、多様なテーマで盛り上がりました。

ハワイに住んでいる誇りと、ハワイに対する感謝の気持ちを持つ。ハワイに住んでいる人たちのバックグラウンドはさまざまですが、それぞれが共通の気持ちを持って、力を合わせることが、ハワイを世界随一の観光地に引き上げているのではないでしょうか。

日本にも、日本を愛し、日本の文化を守るために動くリーダーが必要ですが、それを日本人だけが担う必要はないのではないでしょうか。ハワイが、「ハワイ好き」という共通点を持つ世界のリーダーや企業の協力によって発展してきたのと同じように、日本も世界中の「日本ファン」の協力を仰いで、日本の文化や伝統を守ってもらい、広げていってもらうことができれば、と思います。

イゲット 千恵子 ハワイ教育移住コンサルタント

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Chieko Egged

1971年、神奈川県生まれ。 離婚後、難病の息子を抱えてハワイへ教育移住。国際再婚し、ハワイ在住歴14年。オーガニックスパ、ハワイブランド化粧品会社、美容スクール、通販サイト、コンサルティングの会社を経営。母、妻、経営者の目線で書く、ハワイ生活情報、社交界、ビジネスや教育などを書いたブログで人気を集める。著書に『経営者を育てるハワイの親 労働者を育てる日本の親』がある。

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