日本の観光業がハワイに学ぶべき3つのこと 気候や自然だけが人気の理由ではない

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フリーペーパーを置く台も、抽選で場所が決められており、利用するには料金を払う必要があります。特定の企業が独占しないような配慮もされているおかげで、企業もこうしたスペースを平等に利用できるわけです。

海沿いの一等地と呼ばれる場所は、ハワイの地主であるカメハメハ王朝の土地であるため、民間企業などが勝手に買うことができず、リース契約となっています。勝手に開発ができないので、ハワイにはプライベートビーチが少ないわけです。また、サンゴやウミガメ、海洋生物の保護団体も非常に強い影響力を有しているほか、ビーチを清掃するボランティア団体も多くあり、地主や企業、住民、非営利団体などが一体となってハワイの美しい景観や自然を守っているのです。

専門のマーケティング組織がある

ハワイでは、住民の影響力が強く、たとえばワイキキでは「ワイキキ住民会議」が毎月1回開催され、ワイキキにおける問題点などを、市議会議員や市長といった行政に影響力のある人物をゲストに招いて話し合っています。また、ホテル協会や不動産協会、ワイキキビジネス協会など各業界団体も力を持っており、それぞれの業界における活動や資金集めなどに熱心。時に団結力を示して、法改正などを後押しすることもあります。

2. マーケティングがうまい

ハワイ州は世界に向けたマーケティングやプロモーションに年間8100万ドル(約90億円)を使っています。ハワイは人口140万人の小さな州ですが、マーケティングに使っている額は、日本の観光庁の年間予算の3分の1にも相当するのです。

マーケティングはすべて、年間4億ドルにも上るホテル税をもとに設立されたハワイ州観光局(HTA)という州政府の観光業を請け負っている組織が行っています。ホテル税は2018年1月から従来の9.25%から10.25%に引き上げられたので、より多くのマーケティング費用を投入することが可能になると言えます。

HTAは、米国本土や欧州、日本などそれぞれの地域に合わせたマーケティングを展開しており、特に米国本土に次いで観光客が多い日本には、東京にハワイ州観光局(HTJ)を設け、「ハワイエキスポ」などイベントを開いたり、日本マクドナルドやローソンなど日本企業と連携したりして、さまざまなプロモーションを行っています。

9月に行われた毎年恒例のHTA主催のサミットでは、それぞれの地域に対する2018年のマーケティング戦略を発表。日本については、バーチャル・リアリティ(VR)やSNSを通じて日本のミレニアル世代へのアピールを強めるほか、日系移民の150周年を絡めたマーケティングなども考えているようです。

このほか、ハワイ州では国際線および国内線の飛行機内で、検疫の申請と一緒に、任意アンケートを取っていて、ハワイへ来た目的や名前、住所、年齢、渡航人数、滞在期間などを書いてもらっています。ハワイ在住者も含めて、ハワイ州に出入りする人の動向調査をすることで、その行動データを分析し、今後のマーケティング戦略に生かすようにしています。

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