3万人が熱狂!「蚤の市」ブーム仕掛人の秘密 "編集チーム"を名乗る「手紙社」の仕事論

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手紙社の北島勲社長(撮影:尾形文繁)

どんな女性たちかというと、北島社長いわく「ほっこり系」。手芸などモノづくりが趣味で手仕事の世界観を好み、オーガニック系ライフスタイルを志向する層だという。イメージでいうと、北欧の雑貨やライフスタイルを愛する人や、雑誌『リンネル』(宝島社)を愛読するタイプの人たち、といったところだろうか。

なぜ、この層を虜(とりこ)にするのか。それは、同社のイベントが、それぞれ切り口やテーマは異なれど、共通してクラフト作家を中心に人気の「作り手」を集める点にある。多くのイベントは公募制で出店者を集めるようだが、同社は惚れ込んだ作り手のみに出店してもらう「厳選出店」の形をとっているのだ。

イベントコンセプトや時代性に合うかどうかも重要だが、「とにかく出店者が大事。クオリティを重視しています」と、イベント担当の藤枝梢さんは強調する。クラフト作家でも飲食店でも、可能なかぎり実物を見て、作り手にも直接会いに行く。デザイン性やオリジナリティ、ものづくりへの愛と情熱はもちろん、店舗やHP、パッケージやショップカードなど、細部に心を砕いているか入念に見極めるそうだ。出店依頼の成功率は40~50%。目標出店数に満たない場合も妥協せず、新たに出店候補を探しに行くという。

だから、全体のレベル感が違う。たとえば、リアルでもネット上でもクラフト系マーケットは、誰でも出店できるケースが多い。そのため、特に目の肥えた客は「なんかダサい」「自分で作ったほうがマシかも」と感じるような品質のモノに出くわすことも少なくない。

今年の「もみじ市」で好評だった初出店の「Ren」。イベントリーダーを務めた藤枝梢さんが惚れ込んだ期待の若手作家(写真:手紙社提供)

一方、同社のイベントは同社が選りすぐったプロばかりの出店。行列や即完売も珍しくない人気作家をはじめ、たとえば今年「もみじ市」で初登場にもかかわらず一気に客の注目を集めたという金工の「Ren」のように若手でも実力ある作家が出店している。このように、ときめくモノや作り手と出会える信頼感や期待感が持てるから、ファンは夢中になるのだろう。

作り手が喜べば、間違いない

さらに、選んで終わり、ではない。出店が決まると個々に担当者をつけ、彼らのモチベーションを上げ魅力を最大限に引き出すべく、アイデアを一緒に練ったり、ディスプレーの相談に乗ったり、二人三脚でイベントに臨む。出店者が北海道など関東圏外に在住でも、できるかぎり直接話を聞きに行くそうだ。

イベント直前には手書きの手紙を送り、当日は開催前に一人ひとりの紹介を行って出店者同士のつながりの場も作る。「ここまでする主催者はいないのでは」と、北島社長。

とことん出店者に寄り添う理由について、こう語る。「作り手が喜べば間違いない。一流の作り手がいいエネルギーを発してくれれば、イベントの場もいいエネルギーに満ち、お客様も喜ぶ。そして作り手とお客様の喜びが、手紙社の喜び。この三角関係を大事にしています」。

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