世界的音楽家・坂本龍一に密着し、彼自身「すべてをさらけ出した」と語る初の長編ドキュメンタリー映画『Ryuichi Sakamoto: CODA』が全国で公開中だ。2012年から5年間という長期間にわたる密着取材を通じて、坂本龍一の音楽と思索の旅をとらえた内容となっている同作。NYの自宅スタジオなどで行われたアルバム制作に打ち込む姿からは、仕事に対する真摯な向き合い方が垣間見える。そんな彼にとっての“仕事”とは何なのか、聞いてみた。
僕を通して、震災後の社会を残してもらいたかった
――このドキュメンタリー作品はどういった経緯で制作されることになったのでしょうか。
2011年に、スティーブン・ノムラ・シブル監督が僕を撮りたいと言ってきたんで、そんなに深く考えずに「いいよ」と言ったんです。このときは3.11(東日本大震災)があり、原発事故があり、そこからの復興ということがあった。この日本の社会の変化を、僕を通して残してもらえるなら、それはそれで面白いのかなと。なんとなくそう思ったという感じです。
――もちろん、この映画にはそういった社会的な側面も表現されていますが、同時に坂本さんの日常を描き出す内容にもなっています。
それはやっているうちに自然とそうなったようです。撮影が始まってからは、「こういうところも撮ったら面白くなるんじゃないか」ということは、彼に伝えました。たとえば陸前高田に行くから撮ったらどう?と言ってみたり。もちろん、それを撮るかどうかは、彼が選択することではありますが。ただ、そうしているうちに、自然と僕の話になっちゃったという感じだと思います。
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