勝負師の小池都知事が練った「三段跳び」戦略 あおり食った民進党は「分党」「解党」へ大混乱

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こうした選挙協力をめぐる野党再編の動きは小池氏の新党結党宣言に触発されたもので、まさに野党全体が「小池劇場」に巻き込まれた格好だ。解散後も「なんでもありの状況」(自由党幹部)が公示日直前まで続きそうだ。

いずれにしても小池氏が主役に躍り出たことで、選挙戦の構図も一変しつつある。橋下徹前大阪市長が立ち上げた大阪維新の会は国政選挙に挑戦して関西を中心に54議席を獲得しただけに、首都東京を制した小池氏が旗揚げした希望の党は、単独で戦っても「40~50議席は確実」との見方が多い。ただ、「新たな保守政党として自民党の議席を奪うのか、政権の受け皿として民進党など反自民勢力の議席を奪うのかは見極めにくい」(公明党幹部)のも事実だ。だからこそ選挙結果が出るまで小池氏の"独り舞台"が続く可能性も大きく、まさに「メディア戦略の天才」が選挙戦をかき回すことになる。

首相挑戦は「神の思し召しがあれば…」

そうした中で注目されるのが小池氏の「最終的目標」だ。結党宣言後の民放テレビのインタビューで「将来、首相を目指すのか」と聞かれた小池氏は得意のアラビア語で「神の思し召しがあれば…」と煙に巻いた。自民党総裁選に女性として初めて出馬して敗北した際、「次はうまくやるわ」と不敵な笑みを見せた小池氏だけに、政界でも「女性初の首相を狙っているのは間違いない」(自民幹部)との見方が支配的だ。

都知事選で圧勝した小池氏はその後の米大統領選でヒラリー・クリントン元国務長官がトランプ現大統領に敗れた際、「アメリカでもガラスの天井が厚いのね」と嘆息する一方で「ヒラリーさんは69歳なのよね」と漏らしたという。今年7月に65歳になった小池氏にとって、「首相に挑むための時間が残り少ない」(自民長老)のは事実だ。だからこそ、小池氏が結党会見で否定した「都知事を辞任しての衆院選出馬説」についても、「野党結集による政権交代時の首相候補に、と口説かれれば、土壇場で出馬するのでは」(自民幹部)との噂が消えない。

ただ、それに伴う都知事選を衆院選とのダブル選とすることは手続き上困難とされるうえ、後継候補もまったく見当たらない。さらに都民からみても「300万票近くの支持への裏切り行為」(公明党幹部)だけに、「身勝手な変身との批判を招き、"小池神話"が崩壊して希望の党の票も減らしかねない」(民進党幹部)との指摘もある。

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