ミサイルと解散総選挙と株価との微妙な関係 米国が北朝鮮と「手打ち」をしたらどうなる?

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付け加えるなら、一般に、「隣国が大きくて強力であることは自国にとって嬉しいことではない」。仮に、朝鮮半島の南北の二国が宥和したり、まして統一されるような事態は、中国にとっては(たぶん、日本にとっても)嬉しくない。だが、米国から見ると、より大きくて本質的な仮想敵国である中国を牽制するうえでは好都合な面がある。米国にとって北朝鮮は、憎いだけの相手ではない。

もちろん、各プレーヤーが、どのような意味で「合理的」になろうとしているのかは分からないし、軍事には意外な偶然が作用することがあるので、「安心」はできない。

株価的には、8月29日の日経平均終値は、87円安の1万9362円であったから、ミサイルは、ニュースとして報道が大きかった割には、大きく影響しなかった。翌30日の日経平均は、143円高だったから、株式市場的には、北朝鮮のミサイルに対して「少し驚いた」だけにとどまった格好だ。

解散総選挙の可能性は?

ミサイルの他に、投資家にとって気になる「リスク材料」として、早期解散総選挙実施の可能性が高まっていることが挙げられる。その場合、予想される投票日は10月22日(日)だという。

小池百合子・東京都知事を中心とする勢力の選挙態勢が整わないうちに、解散総選挙を実行し、自民党が多少は議席を減らすとしても自民・公明で過半数を確保して、政権の基盤を強化しようという狙いが解説されている。

野党の議員の動向などを見ると、「早期解散」には少なくとも「そうであっても、おかしくない」程度の現実味があるようだ。ただし、いざ解散ということになると、野党側の準備も急ピッチで進むことが予想され、内閣支持率の状況によっては、与党が大幅に議席を減らして、安倍晋三首相が引責辞任するような事態になる可能性も排除できない。何と言っても「選挙は水物」だ。

政治が、経済のためだけに行われるのではないこと、まして、株価や為替レートのためにあるわけでもないことは重々承知のうえで申し上げるが、筆者の思うに、日本経済及び日本の株価にとって最大のリスクは、日本銀行の正副総裁人事が行われる来年3月以前に安倍政権が潰れることだ。

当面、日本の投資家にとって、実質的に最大の材料は来年3月の日銀総裁人事であり、金融緩和政策の十分な継続が期待できる人選になるかどうかだ、と筆者は考えている。

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