シリコンバレーは、何が”特別”なのか? シリコンバレーの”格言”とは?

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なぜなら、「イノベーションの最大のきっかけは、人と人がぶつかることだから」――だ。人と人がぶつかると、そこにエネルギーが生まれ、アイデアが生まれる。

シリコンバレーの起源と言われるヒューレット・パッカード(HP)の創業も、ウイリアム・ヒューレットとデビット・パッカードの“ぶつかり”によるもの。アップルは故スティーブ・ジョブズとスティーブ・ウォズニアック、グーグルもラリー・ペイジとセルゲイ・ブリンのぶつかりから生まれた。

圧倒的に「ぶつかる場」の質と量がある

シリコンバレーは起業家の世界であり、起業に関する「人と人がぶつかる交流の場」が圧倒的に多く、“質”“量”ともに確保しやすい。これがほかの都市との決定的な違いだと言える。

シリコンバレーの中心に位置し、数多くの起業家を輩出しているスタンフォード大学はもとより、毎週のようにどこかで開かれているカンファレンス、朝食会をはじめとした食事会、ホームパーティなど数え上げればきりがない。街中のカフェは、いつ訪れても、若い起業家と起業家支援が熱く議論をし、別の席に目をやれば、コーディングしているエンジニアがいる。街中のいたるところに「サロン」があるイメージだ。起業を目指す人たちや起業家たちは積極的にそうした「場」に足を運び、私のようなベンチャーキャピタリストもことあるごとに機会を作ってきた。

シリコンバレーでは、こうした起業に関する「場」や「風景」が、あらゆるところで、日常の中に溶け込んでいる。「シリコンバレーに来れば、ベンチャーができる」というより、「シリコンバレーにいれば、自然と人と人とが結び付き始める」という感覚が近い。

フェイスブックの創業者・マーク・ザッカーバーグもハーバード大学出身者だが、起業直後に本社を、シリコンバレーの中心と言われるスタンフォード大学の学生街であるユニバーシティアベニューに移した。これもシリコンバレーに行けば、さらにポテンシャルが開花すると信じていたからである。

「この環境だから生まれる」と感じた大学生の声

「実際にシリコンバレーを訪れて、イメージが変わりました」——。

先週、拙著『シリコンバレー流 世界最先端の働き方』を読んだ東京大学と慶應大学の学生から、立て続けにフェイスブック経由で「感化されてシリコンバレーまで来てしまいました」という連絡が来たので、起業準備などで忙しい合間を縫って、カフェで会う機会をつくった。

彼らの感想は次のとおりだ。

「シリコンバレーに行くためには、ものすごいスキルと人脈、アイデアがなければいけないと思い込んでいたが、いざ現地に来ると、この環境の中でそれらが生まれるというのがわかった」。国籍・人種、キャリアも違うさまざまなアイデアを持った人がいて、その人たちと意見交換し、イベントに行く中で仲良くなり、新しいアイデアが生まれるということを肌感覚で感じたのだと言う。そして、何が何でもこの地で働くことを決意したとも言っていた。

これは「正解」だと思う。

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