プノンペンで暮らす日本人
カンボジアの反政府勢力であり、ポル・ポト派を意味する「クメール・ルージュ」の爪痕が残る1997年から、カンボジアの首都プノンペンで暮らしている40代の日本人男性がいる。
ペンネームはクーロン黒沢(46)。アンダーグラウンドなコンピュータ事情と、東~東南アジアのディープな市井に精通したノンフィクションライターで、近年では2013年5月創刊の電子雑誌『シックスサマナ』の編集長を務める。
『シックスサマナ』は知る人ぞ知る媒体だ。黒沢さんのほか、中米やラオスで四半世紀過ごしている土俗信仰マニアや、16年前に買ったTシャツ1枚で海外生活を続ける吝嗇家(りんしょくか=ケチな人、物惜しみする人)、伝説の鬼畜系雑誌『危ない1号』のシニアエディター兼ライターなどさまざまな深みを持つ人たちが寄稿しており、独特の世界観が形成されている。
熱心なファンがいることに気づかれるまでにさして時間はかからなかった。10号を過ぎた頃から現在まで、アマゾン・キンドルストアの総合ランキングでメジャー誌と肩を並べるのが普通になっている。
同誌以外にも『バンコク電脳地獄マーケット』や『大人のためのドローン入門』など20冊以上の単行本(共著含む)を刊行し、輸入業などの実業も手掛けてきた黒沢さんは、社会に出てからおカネに困った記憶は特にないという。その一方で、貯金するのと会社組織に身を置くことが大の苦手と自嘲する。
とても自由な生き方に見えるかもしれない。しかし、選べなかった選択肢も実は多かったようだ。
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