悪さ重ねた少年が40代で達した質実な稼ぎ方

カンボジアで起業、コアな電子書籍をつくる

ペースダウンの要因は、ページと書き手の大幅増のほか、アマゾン・ビデオ(オンラインビデオのストリーミングサービス)を始めたことも関係している。主に『シックスサマナ』の取材時に撮影した動画を編集したもので、内容の関連性は高い。捨て犬を拾って養い続けている男性を追った『幻の動物王国 悪い奴ほど裏切らない』や、数十台のスマホを持ち歩いて電話のタダがけに精力を注ぐ男性やファイル共有に身をやつした男性に迫る『デジタル・スーパースター列伝 闇の世界の超人たち』など、単独のドキュメンタリーとしても濃い内容だ。こちらも意識的にラインナップを増やしており、連動による売り上げアップを狙っている。

「継続的に新しいコンテンツを出すことで、古くならないし、アーカイブの売れ行きも望める。本当、弾数が大事だと思います。アマゾン・ビデオはプライム会員なら無料で見放題になるので、環境ビデオみたいな感じで視聴している人もたくさんいます。作成者には再生時間分のインセンティブが入る。だから、私はやらないですけど、それこそ何の起承転結もない動画をたくさん作ってバリエーションを増やす手もあります」

記事の執筆は別にして、雑誌全体の編集や動画編集は慣れているわけではなかったが、同人誌を作っていた頃に培った全体を見渡す視点が生きて、やりにくさは感じなかったという。今後は『シックスサマナ』の発行ペースをアップするとともに、英語字幕付きのビデオ制作も積極的に進めていく考えだ。

今を生きることに集中する人に将来のことを聞くのは無粋だ。それでもあえて尋ねてみた。

「子どもは独り立ちできる年齢になりましたが、今は親の衰えが心配です。安定はすばらしいと思いますが、今さら会社で働くのが不可能というのは自分がいちばんよくわかっています。貯金も」

社会に出てから腸の病気の再発はなく、寛解しているが、危ない兆候を感じたことはあった。スポンサー的な人間と接するのが苦手で、そのたびに激しく体調を崩すという。

「生殺与奪の権を誰かに委ねるのも、スポンサーにゴマをするのもダメなんです。とはいえ、自分がボスになるタイプでもない。結局、自分で自分の面倒だけ見ているのがいちばん楽ですね。商売を大きくはできないけど、その代わり自由ですから」

成功できるのはほんの一握り

2014年、プノンペンにわずかに残る貧民街(写真:クーロン黒沢)

マグロのように動き続ける生活のなかで、暇と、圧のある人間関係を忌避しつつ、毎夜明日やる仕事を考えて寝る。それを繰り返しているうちに、自分に最適化された生き方が研ぎ澄まされていったのではないか。キツい過去も苦手なことも朗らかに笑って語る黒沢さんを見てそう思った。

最後に、起業ラッシュのなか、プノンペンで生き残っている日本人の特徴も聞いてみた。

「成功できるのはほんの一握り。4%くらいですかね。まあ、日本でもうまくやれる人なんでしょうね。逆に撤退する人の共通点は、変にプライドが高いことかな。日本で何もできないからカンボジアに来たのに、日本人であることに変な自信があるんですよ。失敗してもぜんぶカンボジア人のせいにしたりして、反省しない。結局、駄目なヤツはどこ行っても駄目なのかも」

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