映画製作者が語る、香港の未来に募る危機感 中国本土で上映禁止になった香港映画「十年」

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第5話「地元産の卵」の一場面(C)Photographed by Andy Wong, provided by Ten Years Studio Limited

――本作の原タイトルでもある「本土蛋」の「本土」は地元という意味だ。「本土」「地元」という言葉にどういう思いを抱いているか。

:本土、つまり地元という言葉は、生まれ育った場所である「香港」を指している。最近は中国本土の影響なのか、非常に政治的意味合いを持った言葉としてとらえられてしまっている。

――本作は未来の子供へのメッセージとも受け取れるが、未来の子供たちに何を期待するか。

:次世代に、自らの独立意識や自分たちのロジックが持てる社会をつくってあげなければならない。政治のせいで、物事を矯正されて行動することがないようにしなければならない。自分の考えることができるようにし、子供たちが自分のために動ける将来をつくってあげたい。

:監督が言うように、独立したオリジナルな思考を持てることは大事なことだ。1997年の返還以降多くの人が香港から海外へ移民し、香港を捨てていった。もちろん悪いことではない。ただ、できれば良識のある市民として香港に残ってほしいし、そのためには香港社会が彼らに自由な思考を持てるようにしてあげなければならない。

「自由に表現できる場であってほしい」

伍監督(左)と蔡プロデューサー(右)は台湾やタイ、日本でも『十年』とコンセプトが同じ映画の撮影を企画している(撮影:梅谷秀司)

――10年後の香港に期待することは。

:政治的な面を考えると、香港は悪化の一途をたどり、自由はどんどん束縛されるだろう。正しい事を発言し表現できる場所であることを期待している。

:正しいことを自由に表現できる所であってほしいし、それを守っていきたい。この空間が10年後にもあるかどうか、それは誰にもわからないし、現実的に難しい部分は多い。それでも中国本土からの圧力によって、守っていかなければならない価値観を捨ててしまうことはあってはならない。

若泉 もえな 東洋経済 記者

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わかいずみ もえな / Moena Wakaizumi

東京都出身。2017年に東洋経済新報社に入社。化粧品や日用品、小売り担当などを経て、現在は東洋経済オンライン編集部。大学在学中に台湾に留学、中華エンタメを見るのが趣味。kpopも好き。

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