中国人風刺漫画家が日本に「亡命」した事情 習近平政権下で強まる言論への規制<4>
ネット上の言論が原因で中国を逃れた人物がいる。「逃亡」先は日本だ。去年9月10日。50年に一度という強雨が関東地方を襲った。慣れない日本の大雨に彼もさぞかし戸惑っているだろう、などと考えながら、私は、彼が当時住んでいた、さいたま市にある埼玉大学の寮に向かった。
インターホンで訪問を告げると、にこにこした大柄な男性がわざわざ階下まで迎えに来てくれた。その王立銘さん(42歳)は、日本の化粧品や電化製品を中国で売るネットショップを開き生計を立てる一方、趣味で風刺漫画を描き、変態辛椒(激辛唐辛子の意味)のペンネームでネットに発表していた。
妻と二人で事実上の亡命生活
ところが、王さんが日本を旅行中だった一昨年、中国のショップのアカウントが突然、閉鎖された。王さんは、身の危険を感じ帰国を断念。8月のことだ。その後、埼玉大学の研究員の身分を得てこの寮に移り、妻と二人で事実上の亡命生活を送っていた。
「もし帰国したら、おそらく商品を密輸したなどの罪を被せて私を逮捕したでしょう。漫画を描いたからだとは一切言わないで」
――その理由は何だと思いますか?
「習近平を描いたからです」。王さんはきっぱりとそう言った。
最近の作品を見せてもらった。彼のパソコン画面に現れたのは、中国政府が大々的に喧伝した戦後70周年の記念式典を皮肉った漫画。走行中の戦車の砲塔から上半身を出した習近平氏が描かれている。
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