中国がピリピリ、「花夫人」とは何者なのか 習近平政権下で強まる言論への規制<3>

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「花夫人」は突然、大学から辞職を求められた
中国政府が市民のネット言論の取り締まりを強化し始めた――。今年4月、NNN系列「真相報道バンキシャ!」で放送された「モクゲキシャ!中国ネット規制」は、言論弾圧の被害者に肉薄した生々しいルポ。今回、当局にマークされている4人を取材した宮崎氏のルポを4日連続でお届けする。習近平政権下の中国で、いったい何が起きているのだろうか。

 

同じ広州にもう一人、「問題人物」がいた。花夫人のハンドルネームで、歴史や事件、事故に関する話題を、頻繁に発信している人物だ。待ち合わせしたホテルに現れた花夫人は、腰まではある見事な黒髪を後ろで束ね、大きな黒縁メガネをかけた中年女性だった。

二重で大きな杏仁型の目のくっきりした顔立ちは、若い頃にはなかなかの美人だったろう。黒っぽい上着に花柄のピンクのスカーフ、黒い合成皮革の短いスカートに黒いストッキングという、年齢の割には押し出しが強すぎる出で立ちも、似合っていない訳ではない。むしろ花夫人というハンドルネームのイメージには、ぴったりだった。

突然、大学から辞職を求められた

花夫人(47歳)の本業は、大学でカウンセリングも行う心理学の教授。しかし、この1カ月前の11月、突然、大学から辞職を求められたという。彼女に連れられ自宅に向かった。南方らしくなかなか止まない小雨の中、騒々しい商店街から青果店や軽食店が並ぶ裏道を通り抜けると、古いアパートにたどり着いた。実は当初、彼女は花夫人のネット上での優雅なイメージを壊したくないと言って、豊かではない生活を見せるのを躊躇していた。

その躊躇の理由には、女性ならではの恥じらいに加え、中国人らしい面子の問題もあったのだろう。デスクと本棚、ベッドでほぼいっぱいになる四畳半ほどの書斎に小さなキッチンがついた自宅の様子は、確かに裕福と言える暮らしではなかった。しかし、本人が気にするほど悲惨には見えず、インテリらしい書生のようなつましい生活ぶりに、私は却って好感を持った。

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