韓国人がこだわる「正しい民主主義」とは何か

歴史から理解するナショナリズム

混迷の現代はどこへ向かうのでしょうか?(写真:YANG JAE HUN/アフロ)

2016年12月9日に国会によって弾劾された韓国の朴槿恵(パク・クネ)大統領。大統領権限は停止され、韓国初の女性大統領は一転して不名誉な立場に立たされている。今回のスキャンダルの一端が10月下旬に発覚したとき、事態が大統領の弾劾にまでいくと考えた人は少なかった。

一連のスキャンダル報道が始まったとき、朴大統領は「直接的な関与はない」としていたが、次々と不祥事が露見。ついには政財界を巻き込んだ刑事事件にまで発展した。国民世論は沸騰し、与党系の国会議員の中にも弾劾に賛成しないと自らの立場が危うくなるとの不安が台頭。そんな思惑も弾劾可決へと作用した。

韓国の歴史と文化への理解が必要

今回、大統領退任を求める街頭デモで、よく見られたスローガンがある。それは、「正しい民主主義を」というものだ。もっともこの言葉は韓国人にはなじみのもの。日本の韓国ウォッチャーにもよく知られた言葉だ。

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韓国政治では「正しい政治」「正しい民主主義」が多用される。「正しい」とは何か。この言葉が出てくる事情を理解するには、韓国の歴史と文化への理解が欠かせない。

韓国近現代史が専門の木村幹・神戸大学教授は、「韓国では朱子学に由来する考え方として、あらゆるものには、理にかなった、本来あるべき姿という意味での『正しい』状態があるはずと考える」と話す。

つまり、政治においても理想としての正しい大統領の治世があるはずで、これに反することは許されないと考える。今の朴政権は、腐敗し、正しい民主主義を行っていないというわけだ。だから「これを正すために腐敗した政権を倒さねばならない」と考えるのだという。

もっとも、この考えに木村教授は若干の疑問を呈する。なぜなら、政治家個人の腐敗や違法行為の存在は民主主義とは直接的関係はない。また、民主主義には大統領制や議院内閣制など、多様な形態が存在し、どれが「より正しい」のかという論点を設定しても、学問的には意味をなさないからだ。 

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