「日本一貧乏な観光列車」が人気を集めるワケ

旅行会社のノウハウと鉄道好きの熱意が融合

トラピスト修道院最寄りの渡島当別駅を通過する「ながまれ海峡号」(筆者撮影)

全国で数多く走るようになった観光列車。それらの多くは、基本的に鉄道会社が沿線の商工会議所などの協力を得つつ企画し、走らせている。

ところが、2016年3月の北海道新幹線開業に合わせて並行在来線を受け継いだ第三セクター・道南いさりび鉄道の観光列車「ながまれ海峡号」は、大手旅行代理店である日本旅行が企画したものだ。

「ながまれ海峡号」は、優れた鉄道旅行商品を表彰する同年の「鉄旅オブザイヤー」のグランプリに輝いた。鉄道会社ではなく旅行会社が運行するという、従来の常識とは異なる観光列車はなぜ生まれ、どんな工夫が行われているのか。現地取材を踏まえ、その実態を紹介する。

「ながまれ海峡号」が生まれるまで

北海道新幹線の開業まで数年となったある日、北海道オプショナルツアーズの取締役である永山茂に、1本の電話がかかってきた。電話の主は、北海道庁から木古内町役場に派遣され、新幹線開業時に第三セクター鉄道へ経営移管することになったJR江差線・五稜郭―木古内間の移管業務担当者だった。

北海道オプショナルツアーズは日本旅行の子会社で、訪日外国人向けの道内バスツアーを企画販売している会社だ。永山は、日本旅行入社時に北海道勤務を志願して以来、札幌を拠点に道内で数々の仕事をこなしてきたベテラン。学生時代に北海道の国鉄現役蒸気機関車に触れたことがきっかけで、北海道好きな鉄道趣味人として過ごしてきた。

永山は、鉄道趣味活動を活かして北海道鉄道観光資源研究会の代表も務めている。冒頭の電話は同会に対して、そのノウハウを使うことで、やがて誕生する第三セクター鉄道の活性化ができないかと相談する内容だった。依頼主である道庁からの派遣者も鉄道好きで、同会の活動を報道等で知っていたことから、永山にコンタクトをとってきたのだ。

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