メイ首相は「要らぬギャンブル」で敗退した 悪夢としか言いようがない結末に

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負けられないはずだったが…。キャメロン前首相と同じ轍をを踏んだメイ首相(写真:AP/アフロ)

4月18日にメイ英首相が突如、解散総選挙の方針を発表した直後、筆者は東洋経済オンラインに「メイ英首相が突然の解散総選挙に動いた理由~再び「絶対に負けられない戦い」に挑む~」と題する記事を執筆し、以下のように述べた。

総選挙を巡るシナリオは、(1)与党大勝、(2)現状維持、(3)与党敗北の3つである。結論から言えば、メイ首相にとって(1)以外は「負け」である。「負け」の場合は離脱交渉に甚大な影響が及ぶ。その意味で勝率は高いながらも、今回の総選挙はメイ政権にとって絶対に「負けられない戦い」であり、負けることは恐らく想定されてもいない。だが、思い起こせばキャメロン元首相も同じことを思ってEU離脱を国民投票に問うたはずである。国家の命運を左右する話をむやみに世論へ投げてはいけないことは昨年、痛いほど学んだはずなのに、同じことが繰り返されようとしている。

国民投票から約1年、英国の政治家はまた「要らぬギャンブル」に打って出て、世論に裏切られることになった。

与党・保守党の議席数は318議席と選挙前の330議席から減少し、過半数(326議席)を割り込んだ。対抗軸である労働党の262議席を上回り第1党の座は維持したものの、現有勢力(330議席)からのさらなる上積みを狙い、370議席も視野に入れていた解散決定(4月18日)時を思い返せば、想定外の敗戦である。

もちろん、昨年の国民投票や米国の大統領選挙に比べれば、ある程度予見できたことではあったが、サプライズであることには違いない。党内基盤の拡充を確信して解散を決断したメイ英首相にとっては悪夢としか言いようがない結末だろう。

決勝点となったオウンゴール

今後はブレグジットに対する考え方の近い民主統一党(DUP)と連立を組んで辛うじて政権を維持する可能性が最も高そうである。メイ首相の求心力低下は不可避であり、現段階では公表されていないが、保守党が政権を維持するにせよメイ首相がその座に座り続けるのは困難と見られる。仮にそうなれば英国の首相は2代続けて党内基盤拡大のために「不要なギャンブル」を行った結果、職を追われるという構図になる。

策を弄する者は最後まで謙虚かつ用心深くなければならないが、世論の空気を見誤ったマニフェスト(政権公約)で自爆した格好である。

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