キリン「一番搾り」を"大変身"させた男 フローズン・ツートンで拓く、”新”王道マーケティング

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消費者との接点になるリアル店舗の活用も欠かせません。10万店以上に及ぶ飲食店とのネットワークは私たちの重要な資産であり、見方を変えれば「メディア」としての情報発信の場でもあります。特に若い世代はビールは家で飲まずに飲食店で飲む傾向が強い。そうした生の消費者の声から学ぶことは計り知れません。

たとえば、2011年の夏にディズニー・シーでテスト販売をしているときに気づかされたことがあります。当時、現場でフローズンが好調だという話を聞きました。その理由を聞いたところ「泡がフタの役割をしてくれるから」、と意外な答えが返って来ました。遊園地ってアトラクションで1時間待ち、なんてこともよくありますよね。そんな混んでいる中で飲み物を持っていたら、ちょっとぶつかってこぼしたり、炎天下ですぐぬるくなったりで最悪です。ところが、フローズンは氷の泡がフタの代わりになってこぼれづらいうえ、冷たさを保つ役割も果たしてくれる。

ビールを瞬発的に飲み干してしまう習慣のあるキリンの社員では、逆立ちしても出てこない視点でした。30分もかけてビールを飲むなんて考えられませんから(笑)。

 

消費者を知るには「彼女をつくる」のがいちばん?

――消費者の気持ちを読み取りヒットをつくるアイデアは、どうやって生まれるのでしょうか?

勘違いされやすいのですが、個人プレーではないのです。特に企業においてマーケターがアイデアを出していくにはチームづくりが何より重要です。一番搾りのマーケティングは4人チームでやっているのですが、それぞれ年代、性別、家族構成などが違う社員をあえて集めています。チーム内で毎週末、どこへ行って、どんな面白いことを感じたのかなどを共有しています。

自分たちにないものは出てこない。結局、アイデアってそういうものだと思います。20代の女の子が何を考えているかなんて、正直言って50代のおじさんにわかるわけない。もちろん山ほど意識調査はやりますよ。でも、どうしてもずれは生じてしまう。そのずれを埋めて行くためには、行動や興味の範囲をできる限り広くして自分のインプットを増やすしかありません。

だから私は週末家にこもっているメンバーには、「まずは彼女をつくれ」と指導します(笑)。そうすれば彼女の興味を丸ごと自分のインプットにとりこめるでしょ。

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