キリン「一番搾り」を"大変身"させた男 フローズン・ツートンで拓く、”新”王道マーケティング

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門田邦彦●キリンビール マーケティング部商品担当主査 1971年生まれ。1994年キリンビール入社。入社後、埼玉支社の営業担当を経て2001年よりマーケティング部。「氷結」などの担当の後、現在キリンビール「一番搾り」担当。「一番搾りフローズン<生>」「一番搾りツートン<生>」を開発。

――それはなぜ?

定番商品として継続的に消費者に受け入れられるには、製品がいいのは当たり前で、もう一歩の踏み込みが必要だからです。消費者に「これは新しいな」「価値があるな」ということを、肌感覚として納得してもらわなければいけません。そのために価値を知ってもらうための新しいコミュニケーションが重要になってきます。

――その答えがフローズンとツートンだと。定番商品の切り口を変えて新しくしたということでしょうか。

たとえばハイボールなんかもそうですよね。最近までウイスキーなんて疲れたオヤジがしっぽり飲むイメージしかありませんでした。それがウイスキーを炭酸水で割って飲むというスタイルをあらためて訴求したハイボールの登場で、若い人が居酒屋でワイワイ飲むものに生まれ変わった。プロモーションには、飲食店をうまく使っていました。これに私は強い衝撃を受けました。昔からある定番商品でもコミュニケーションの切り口次第で一気に現代化するわけです。

同じように刺激を受けたのはスターバックスコーヒーです。彼らは喫茶店の現代化に成功した。女性でも入りやすいゆったりとした空間をつくることで、喫茶店といえば男性がコーヒー、女性は紅茶というそれまでの固定観念をぶち破りました。コーヒーそのものを変えるわけではなくて、提供する「場」を変えた。カップでコーヒーを持ち運ぶスタイルを、「かっこいい」と定着させたこともそうです。ハイボールとはまた違うアプローチですね。

現代化のカギはソーシャルにあり

ツンと立つ泡が特徴のフローズン。SNSを意識したビジュアルづくりで成功。

――一番搾りフローズンとツートンはどう現代化したのでしょう?

それぞれ現代化のキーターゲットになる若者に、どう突き刺さるものにするかという点にはかなりこだわりました。特にソーシャルメディア(SNS)での話題作りを重視しました。たとえばフローズンでは泡の形だけでも相当の協議を重ねたんです。ツンと立った見た目に可愛らしい泡を表現した裏側には、「写真を撮って共有したい」と若者に思ってもらうストーリーがあります。

この戦略は実際に功を奏し、SNSでの認知度が大幅に向上。2012年夏場では、ツイッターで月1万件を超える投稿があり、予想以上の反響となりました。ツートンもフローズンでのこうした実体験を生かして、ぱっと見が華やかでカラフルなビジュアルにしました。「試したい」「面白そう」を刺激したのがマーケティングのポイント。実はツートンビールは昔から存在していたのですが、熟練のバーテンダーしか作れなかった。それを誰でも実現できるように、専用の器具(ツートンメーカー)も開発しました。

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