瀕死の危機「伝統工芸品」を救う術はあるのか 中川政七が語る工芸品再生プラン

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作り手が「好き」や思いを込めれば…(撮影:梅谷秀司) 
創業300年、奈良晒(ならざらし)の問屋を祖業に、自社の布製品と他社工芸品で品ぞろえした直営店を全国約50店舗展開する。工芸業界初のSPA(製造小売業)を創造、他の工芸品メーカーのコンサルティングにも飛び回る。『日本の工芸を元気にする!』の著者で、業界の若き台風の目である中川政七商店十三代目の中川政七氏に今後のプランを聞いた。

伝統工芸の会社が、ものすごい勢いで…

日本の工芸を元気にする!
『日本の工芸を元気にする!』(東洋経済新報社/219ページ)書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします

──今もあちこちで伝統工芸の灯(ともしび)は消え続けているのですか。

そうですね。工芸の産地出荷額はピーク時5400億円あったのが、今は1000億円ですから、この30年で5分の1以下。会社数も4分の1です。それはものすごい勢いで倒産しています。ひっきりなしに廃業のあいさつに来られて、それが「日本の工芸を元気にする!」というビジョンにもつながったんです。

──「中小メーカーこそ“もの売り”を脱却して、ブランドづくりにシフトを」というのが持論ですね。

ものづくりはマーケットインよりプロダクトアウトであるべきと思うんです。作り手が“好き”や思いを込めれば、共感し選んでもらえる。

ただ中小工芸メーカーの問題はそれ以前。予算表なしに日々やり繰りしている。いやホント、そういうノリです。だから「経営をやりましょう」がまず第一。経営者に最低限の会計の見方を教えて、ちゃんと経営した先にブランディングというのがあるんですよ、とコンサルする。

──「適正利益」「対等」「公正さ」という言葉が至る所で出てきます。

僕らの世界でいうと、メーカーより問屋さん、問屋さんより百貨店や小売店のほうが大きい。パワーバランスとして、大が小を買いたたく下請けいじめがあるわけじゃないですか。でも、その結果が今の工芸の衰退なので、言うこと聞いてたらもう死ぬしかないんやで、というところに来てる。自分たちで生きていく道をちゃんと作らなきゃいけない。

僕らがメーカーであるからこそ、取引先のメーカーにやられたら嫌なこと、こうしてくれたらうれしいということがよくわかる。なので僕らは取引においては対等でありたい、公正でありたい、基本フラットでありたい。かつて力関係に物をいわされて本当に嫌だったから。

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