瀕死の危機「伝統工芸品」を救う術はあるのか 中川政七が語る工芸品再生プラン

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──頂点の百貨店から「特別限定品を作れ」と吹っかけられたり。

そうそう。買い取りはしない、リスクも取らない、でも当店は別格だからとか言って別注を求めてくる。新しくできる都心のビルに出店を決めたらネチネチいびられたり。僕がその百貨店が誇る大ブランドに屈しないから、気に入らんわけですよ。それで何か見つけては文句つけてくるわけですけど、「いや、意味わからないです」という話で(笑)。

このままだとものづくりができなくなる

──工芸メーカーが自立し、プライドを持ったものづくりを取り戻すことが、自社の生きる道にもつながると他社のコンサルを始められた。ある種の業界お助け人ですか?

中川政七(なかがわ まさしち)1974年生まれ。京都大学法学部卒業後、富士通入社。2002年中川政七商店に入社、08社長就任。16年に13代中川政七を襲名。「遊中川」「中川政七商店」「日本市」など直営店展開。15年に独自の戦略で高収益を維持する企業を表彰する「ポーター賞」、16年に「日本イノベーター大賞」優秀賞受賞。(撮影:梅谷秀司)

いやいやそんな、別に僕、善人ではないんで(笑)。ただ、本当によその産地で次々潰れていくから、このままだとものづくりができなくなる、という危機感が最初にあって。僕らの店で扱う8割以上は他メーカーにOEM(相手先ブランドによる生産)で作ってもらっていて、その彼らがどんどん潰れていく。

そこで僕らがコンサルに入って生き返らせることができれば、その会社にとってもいいし、うちにとっても安定的な供給源になるわけですよね。そのためのコンサル。別に慈善事業じゃないんです。僕ら自身のサプライチェーンの確保です。

──他人のコンサルもきれい事じゃなくて、自分たちのため。

生きるために。かつ、それが世の中的にもいいよねと。それが両立できているから、経済的利益と社会的利益を同時に追求しているということでポーター賞も受賞したと思うし、そのビジョンを掲げて実行に移しているからこそ、うちの会社を評価してもらえているんだと思う。

──工芸に産業革命を起こすという「さんち構想」とは?

新しい形で工芸品を製造する“産地”、作り手・使い手をつなぐ伝え手の知恵と思いの“三知”、買う・食べる・泊まるの土地を楽しむ“三地”、「〇〇さんち」と親しみを持って呼んでもらえるようにと、4つの「さんち」を込めました。それには産業革命と産業観光が必要です。サプライチェーンが崩壊していく中で、垂直統合という産業革命が緊急課題です。

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