「尾崎牛」のグローバル化が映す和牛の危機 価格高騰と飼育者減の間で悩む

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過去5年間の国内における「黒毛和種」の肉用子牛の平均売買価格データで、2012年度と2016年度を比較すると、価格が実に2倍弱ハネ上がっています。肉用子牛価格「黒毛和種」は、2001年のBSEの影響により、下回る傾向を見せたものの、2002年度以降は上昇傾向で推移し、2010年度以降、子取り用雌牛の減少により子牛の出生頭数が減少したことに加え、2012年度以降は、枝肉価格が上昇したことから、右肩上がりで上昇しています(出典:農林水産省「食肉鶏卵をめぐる情勢〈平成29年2月〉」)。

肉用牛の飼養戸数の大幅な減少

2つ目の理由は畜産農家(繁殖農家+肥育農家)である、肉用牛飼育戸数の大幅な減少です。

動向としては、肉用牛の飼養戸数は、小規模層の飼養者を中心に減少傾向で推移しており、2016年(平成28年)も廃業等により対前年比4.6%減少しました。(出典:農林水産省「食肉鶏卵をめぐる情勢<平成29年2月>」)。肉用牛飼育戸数を中長期で見てみると、過去20年で3分の1に減少しています。肉用子牛平均売買価格が上昇傾向にあるにもかかわらず、肉用牛飼育戸数は右肩下がりに着実に減少しています。

近年の子牛の価格高騰で、以前より儲かるようになったように思えますが、データから判断すると、次世代に引き継がれないことが多くなっていることがわかります。過去に狂牛病問題、伝染病の口蹄(こうてい)疫の問題があり、子牛の出荷数が減少し、和牛の価格が下落しました。

それでも継続してきた生産農家は今、多くが70歳代に突入し、さらに後継ぎがいない状態です。70代の農家が退職金代わりに牛を売却して廃業するところが多いのです。1戸当たりの飼養頭数は、若干増加しているといわれていますが、和牛は精密機械のように丁寧に扱わなければならないという話もあります。

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