景気が良いのは、円安で潤う大企業のみ なぜマスコミは日銀短観の事実を曲げて伝えるのか

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景気は本当によくなっているのか(撮影:今井 康一)

日本銀行の6月短観(全国短期経済観測調査)は、「企業の景況感が大幅に改善されたことを示す」と報道された。そして、安倍政権が参院選で政策効果をアピールする材料に使われるだろうとも報道された。しかし、内容を詳細に見ると、こうしたトーンの報道とは大分異なる姿が浮かび上がる。

上の報道は、業況判断指数(DI)が、大企業製造業で4となったことを根拠としている。3月調査ではマイナス8だったので、12ポイントの改善だ。2期連続で改善し、2011年3月調査(6)以来の高水準になった。

これは事実である。しかし、大企業製造業は全体の中の一部分であることに注意しなければならない。中小企業のDIは、製造業がマイナス14、非製造業がマイナス4だ。

日本経済全体の姿を示す「全産業、全規模」で見ると、6月のDIはマイナス2だ。3月のマイナス8に比べれば改善したものの、マイナスである。つまり、景気が「悪い」と答えた企業のほうが、「良い」と答えた企業より、依然として多い。

業況判断の3項目からの選択肢別社数構成比で見ると、さらにはっきり分かる。圧倒的に多いのは、「さほど良くない」との回答なのである。この選択肢が、製造業でも非製造業でも、大企業で74%となっている。「さほど良くない」と「悪い」を合わせると、製造業では大企業で85%、中小企業で86%、非製造業では大企業で81%、中小企業で84%だ。

つまり、6月の短観を虚心坦懐に読めば、「日本企業経営者の圧倒的多数は、景気の先行きについて悲観している」ということだ。新聞等の報道は、ミスリーディングだ。

なお、3月短観の際にも、新聞の見出しは「景況感が大幅に改善」というものだった。この時は、改善したのは事実だが、ほとんどの指数がマイナスだった。この時も虚心坦懐には、「DIは依然マイナス」というべきだったのである。短観をめぐる報道には、意図的なバイアスがあるように思えてならない。多くの人は、新聞やテレビの報道だけを見て、原資料を確かめない。そうすると、誤った判断を持つことになる。

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