豊臣秀吉は「ズバ抜けて出世する人」の典型だ 「人たらし」だけじゃない!5つの秘密とは?

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こうした「恵まれた環境」の中で、秀吉の持って生まれた才能がいかんなく発揮されたわけですが、ではその「才能」とは何だったのか。

秀吉といえば、「人たらし」が有名ですが、それだけではなく、秀吉は「人を使う」こともうまかったのです。

【4】能力ある部下に「適材適所」で実力を発揮させた

秀吉は「有能な人材」を見い出し、「適材適所」で個人の能力を発揮させました。

秀吉自身、本来ならほとんど出世の見込みがない低い身分から大抜擢された経験から、彼もまた出自にとらわれない「能力重視の人材登用」に積極的でした。

このため、秀吉の率いる軍団は織田家随一の精強さを誇り、「本能寺の変」のあと、天下統一の事業を続ける大きな力となったのです。

【5】ライバルを懐柔し、絶妙の「バランス感覚」で人材を登用した

天下統一を成し遂げてからも、絶妙なバランス感覚で人材を配置しました。

徳川家康のような「ライバル」も懐柔して取り込み、大大名を「五大老」として政権中枢に据える一方で、石田三成ら実務に長けた逸材を「実質的な政権運営者」として「五奉行」に任命。豊臣家の支配を磐石なものとしました。

「時代」を味方につけて、「才能」を開花

秀吉は当時最強の織田家を率いる信長のもとで、軍事に関する知識はもちろん、これに付随する政治、外交、経済など幅広い知識を学びました。

そのため、「大名の一家臣」という立場にもかかわらず、そこで体得した「天下人に必要なあらゆるノウハウ」は、信長に次ぐリーダーとなった時点で、ほかの有力大名をはるかに凌いでいました。これに自らの得意とする「人たらし」も活用しつつ、ついに天下統一を成し遂げました。

このように、秀吉が大出世を実現するには、チャンスをものにできる才能や実力といった「個人の資質」だけでなく、自分をさらに成長させてくれる「最も適した環境」も必要だったのです。

現代に生きる私たちにとっても、「出世」は身近かつ非常に重要な関心事のひとつです。

秀吉が歴史的人物の人気ランキングでつねに上位にあるのも、彼の「異例な大出世」に対する尊敬と憧れが多分に含まれているからだと思います。

日本史には、秀吉のように「出世を遂げた人物」や、逆に「道を誤り失脚した人物」が多数登場します。

ぜひ先人たちの「成功」と「失敗」を学び、現代に生きる私たちの「処世術」に応用してください。歴史は、いまを生きるための「知恵の宝庫」ですから。

山岸 良二 歴史家・昭和女子大学講師・東邦大学付属東邦中高等学校非常勤講師

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やまぎし りょうじ / Ryoji Yamagishi

昭和女子大学講師、東邦大学付属東邦中高等学校非常勤講師、習志野市文化財審議会会長。1951年、東京都生まれ。慶應義塾大学大学院修士課程修了。専門は日本考古学。日本考古学協会全国理事を長年、務める。NHKラジオ「教養日本史・原始編」、NHKテレビ「週刊ブックレビュー」、日本テレビ「世界一受けたい授業」出演や全国での講演等で考古学の啓蒙に努め、近年は地元習志野市に縁の「日本騎兵の父・秋山好古大将」関係の講演も多い。『新版 入門者のための考古学教室』『日本考古学の現在』(共に、同成社)、『日曜日の考古学』(東京堂出版)、『古代史の謎はどこまで解けたのか』(PHP新書)など多数の著書がある。

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