人口7割が「定職ナシ」でも不幸とは限らない

一方、「勤勉に働く日本人」は幸福なのか

様々な職を転々としながら暮らす、タンザニアの零細商人たち。写真は香港でカバンの路上販売をするタンザニア人の2人(撮影:小川さやか氏)
「サラリーマンは辛いなぁ」「働きたくないなぁ」――。
私たちはしばしばこう愚痴をこぼしながらも、実際には勤勉に働き、効率性と成果を追い求め、ときに自己啓発に励みながら堅実な将来設計を思い描くことに余念がない。そして、安定した職に就いていなかったり、怠け者の人はしばしば、世間から心配の眼差しで見られがちだ。
しかし、世界に目を向けてみれば、こうした成果主義、資本主義的な価値観とはほど遠く、人々が”その日暮らし”(living for today)を送りながらも豊かに暮らす社会が存在する。
その1例が、タンザニアの零細商人「マチンガ」だ。彼らの生き方とは。
“その日暮らし”の人々と社会について論じた『「その日暮らし」の人類学――もう一つの資本主義経済――』著者、小川さやか氏に聞いた。

 

――タンザニアの都市部では、人口の7割近くが、露天商などの零細商売や日雇いなどに従事しているといいます。日本で暮らしていると、なかなか想像の及ばない状況です。

タンザニアの都市部では、農村から出稼ぎに出てきて、路上販売、零細製造業、日雇い労働などの職を渡り歩く人たちが社会の主流です。

タンザニア都市人口の66%が「定職ナシ」

こうした“インフォーマルセクター(開発途上国に見られる国家の統計や記録に含まれていない経済部門のこと)”の仕事を主な収入源としている人たちは、都市人口の66%強を占めます(2006年『労働力調査』)。つまり、日本におけるサラリーマンのような多数派が、零細な仕事を転々とする「その日暮らし」をしているのです。

残りの34%の中には、家事労働や農業に従事する人も含まれているので、民間の会社員や公務員といった定職に就ける人は、全体の2割強とわずかです。彼らは、そこそこ裕福な家庭の出身ですが、その中でもいいお給料をもらえるのは、きちんと大学教育を受けた、政府関係か外資系企業に勤めている人くらい。正規の社員でも、零細商人とほとんど変わらないお給料しかもらえないことがあります。

ならば、あえて定職に就かなくても、休みや労働時間をコントロールできるインフォーマルセクターの仕事のほうがいいや、ということになる。つまり、「正規の職に就けないから」インフォーマルセクターに従事しているわけではなく、正規の職を得る必然性が必ずしもないのです。

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