目指すべき組織は、「全員でひとつの身体」だ 自衛隊特殊部隊に「非常時の組織論」を学ぶ

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ひとつの身体のように動くことができる組織を作るには?(写真:master1305 / PIXTA)
いかなる条件下でもミッションを達成するプロ集団。そんな特殊部隊を自衛隊で初めて創設したのが伊藤祐靖氏だ。まるで前例がないなか、「何が必要か」を考え抜き、素人集団を精鋭に鍛え上げた。死と隣り合わせの環境で磨かれた伊藤氏の洞察には、組織論の本質がつまっている。
同氏がその体験的組織論を披露するのが週刊東洋経済の新連載「非常時の組織論」。12月3日号(11月28日発売)に掲載された連載第1回の全文をお届けする。

 

週刊東洋経済は特集だけでなく、連載がスゴいんです。この連載がオンラインで読めるのは第1回だけ。毎週見逃さないようにするためには、おトクな定期購読をご活用ください

2001年3月27日、自衛隊初の特殊部隊が海上自衛隊に創隊された。私は、その創隊準備を含め、足かけ8年在隊した。

2007年に自衛隊を辞めた後は、単身、フィリピンのミンダナオ島に飛び、そこをベースにして世界の各地で特殊戦に必要な技能や知識を身につけた。本連載では、この経験から私が学んだ組織論をお話ししていきたい。

「とにかく俺を疑え」

「今から1年間、やることなすこと、誰も経験のないことだ。だから、俺がやろうとすること、おまえらにやらそうとすること、すべて疑え。やろうとしていること自体が間違いかもしれない。この中の誰かが、今からの訓練で死ぬかもしれない。『何であんなことをやろうとした? できるなんて思った?』と後から言ったって、死んじまった者は生き返らねえ。とにかく俺を疑え」

特殊部隊の訓練を初めて行うに当たって、私は特殊部隊要員の学生たちに本音を明かした。

創隊の1年後には特殊戦に関する教育を終了し、われわれは実戦配備に就く。そこまでの私の立場は、教官兼学生という奇妙なもので、特殊部隊要員に特殊戦の教育をしながら、自分も特殊部隊要員として特殊戦の技術を習得する必要があった。

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