株式投資の「空気を読む」に潜む罠とは?
「情報カスケード」の発生、群衆行動が誤る日

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相場が落ち着かないと、経済学者も落ち着けない

著者:安田洋祐(経済学者、政策研究大学院大学助教授) 撮影:尾形文繁

アベノミクスへの期待に牽引されて順調に上がってきた日本株が、5月23日に突如として暴落したことは記憶に新しい。その日、日経平均株価は、ITバブル崩壊以来、実に13年ぶりの下げ幅を記録した。

乱高下を繰り返した株式相場は、その後も不安定な状況が続いている。

相場が落ち着かないと、実は筆者も心が落ち着かない。株式投資をしているわけでも、損失を被った投資家に同情しているわけでもないが、株や経済の見通しについて、一般の方から尋ねられる機会が一気に増えるからだ。

「えっ、それを考えるのが経済学者でしょ?」と思われるかもしれない。しかし、残念ながら短期の相場変動について、経済学が言えることはほとんど何もないし、何より筆者の専門は、金融やマクロ経済とはまったく関係ないのだ。

と、愚痴をこぼしてみたところで、この手の質問から逃げることは難しい。どうせ避けられないのであれば、「相場についてはノーコメント」や「よくわからない」以外の、少し気の利いたコメントを用意しておきたいと思うのが人情だ。

現実の相場の動きについて、学問的に理由を説明することは(筆者には)できないが、今回は、投資家のインセンティブに注目して、なぜ株の暴落や急騰、乱高下が起きるのかという一般論について考えてみたい。

〝合理的〟であるはずの投資家が、一見すると非合理に見える群衆行動に陥ってしまう、合理的群衆行動(rational herding)の理論を取り上げる。

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