欧州の「貨物列車」はこんなに進んでいる 衰退が続いた日本とは大きな違いが

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シュタドラーの英国DRS向け88型電気機関車。小型ディーゼルエンジンを搭載し、短時間の無架線地帯での入れ替え作業に従事できる

9月にドイツ・ベルリンで開かれた世界最大級の鉄道見本市「イノトランス」。会場に展示された車両の中で目立つのはやはり旅客用車両だが、その一方で物流業界関係者から大いに注目を集めていたのが、機関車や貨車といった貨物輸送用の車両だ。

一般の人々が貨物輸送用の車両に目を向けることは少ないだろうが、鉄道による貨物輸送量が高い割合を占める欧州では重要な存在だ。旅客輸送が圧倒的な規模を誇る日本ではあまり想像できないが、世界的に見れば旅客より貨物の方が輸送量が大きい国も多く、各国の鉄道を支える重要な屋台骨となっている。

イノトランスの会場で見た、未来の物流スタンダードを検証してみた。

欧州で求められている機関車とは

物流を支える貨物列車の牽引には、もちろん機関車が欠かせない。各メーカーは、毎回何らかの新機軸を盛り込んだ新型、改良型の機関車を発表する。欧州で主に使用される最新の機関車には、いったいどのような特徴があるのだろうか。

欧州では、現在も貨物・旅客双方に多数の機関車が使用されている。機関車と一口に言っても、その仕様は用途や路線、国によってさまざまだ。電気機関車なのかディーゼル機関車なのかといった基本的な部分は当然ながら、電気機関車の場合は使用する場所によって電圧や交流・直流の違いもある。

また、貨物用の機関車なら重い貨物列車を牽引できるパワーが、旅客用ならスピードが求められるなど、用途によって求められる機能も変わってくる。鉄道会社が機関車を導入する際には、これらの点を考慮して仕様を決定する必要がある。

もちろん、一台の機関車であらゆる条件をカバーできるならそれに越したことはない。実際に、1980年代には「汎用型」と称し、重量貨物列車を牽引できるパワーを持ちつつ、最高時速も200キロ以上という高性能電気機関車が各国で研究・開発された。ところが、特に黎明期の汎用型機関車は、牽引力・高速性能ともに中途半端になってしまい、故障が多い車両もあった。

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