インドの電車が「ドア開けっ放し」で走るワケ

事故死が毎日起こる国に日本流は通用しない

乗客が身を乗り出したままで、線路冠水したサイオン駅付近を徐行運転で走り続ける近郊電車

インド最大の都市ムンバイには、インド国鉄のセントラル・レイルウェイとウェスタン・レイルウェイがそれぞれ複々線の線路で近郊電車を運行、通勤輸送の大動脈となっている。広軌1676mmの線路を走る電車の車体幅は約3.6メートル、日本の新幹線より約200mm広く、12両編成の電車が線路別に各駅停車と急行として運行され、朝夕のラッシュ時にはそれぞれ4~5分間隔でやって来る。住宅事情が悪く家賃が高いムンバイでは、この電車で1時間以上かけて遠距離通勤する人も少なくない。

転落事故は乗客の自己責任

冒頭の写真をご覧になって、日本の電車とは決定的に違うことがおわかりいただけるだろう。ムンバイの近郊電車はドアが開けっ放し、多くの乗客が戸口から身を乗り出しているが、転落事故は乗客の自己責任である。

日本でも30年くらい前までは、機関車牽引の客車の一部はドアが手動の開き戸であったが、このように混雑する電車は自動ドアであることが常識である。安全に対する日本の物差しで測れば、これは許容しがたい危険な状況であるが、インドの物差しで測れば許容範囲ということである。

インドでもメトロ(地上区間が大半で地下鉄と呼ぶのは相応しくない)の電車は自動ドアで、それを国鉄の近郊電車に適用することは可能である。しかし、メトロとはケタ違いに多くの乗客をさばく近郊電車(運賃はメトロより1ケタ安い)を自動ドアにして、日本と同様にすべてのドアが閉まらないと発車できないようにすると、停車時間が延びて定時運転ができなくなる。ムンバイの近郊電車は見切り発車(戸口にしがみ付く自信の無い人は乗車をあきらめる)により定時運転を確保しているのである。

しかし転落事故は毎日発生しており、線路横断なども含めてムンバイ地区の鉄道事故死者数は1日7~8人に達する。もちろんこの状況を放置すべきではないが、過大な輸送需要をこなすため、安全対策が後手に回っているのが現状といえる。

夕方ラッシュ時のダーダル駅急行ホーム。到着直後(左)と発車直後(右)
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