米大統領選挙は、下馬評を覆し、ドナルド・トランプ氏の勝利で終わった。金融市場にとっては5か月前に経験した英国のEU離脱(Brexit)に続く激震である。
クリントン大統領誕生に備えてリスク許容度の改善を進めていた金融市場は再びリスク回避姿勢を強め、為替市場では一時円買い・ドル売りが加速したが、Brexit時に比べれば値動きは穏当なものに留まっている。
理由は定かではないが、市場参加者は当時を教訓としてポジションの傾きを抑えてイベントに臨んだのかもしれない。もしくは、勝利演説において過激な発言が控えられていたため、安心感が広がったという見方もある。
トランプ・ショックの影響はまだこれから
だが、後述するようにトランプ・ショックの影響はこれから顕現化してくるはずだ。現在、金融市場がさほど動いていないのは「分からないことが余りにも多過ぎるから」という面もあるのだろう。
話を為替相場予想に移せば、筆者は元より大統領が替わっても、2017年は過去2年半のドル高相場の本格的な調整、すなわちドル安が訪れると予想してきた(『今は踊り場、為替は90円台の円高に向かう』参照)。FRB(連邦準備制度理事会)が正常化プロセスを進めるには環境が厳しいことは2017年も変わらないため、米金利先高観への期待が剥落していくからだ。
トランプ大統領誕生はこうしたシナリオを補強する材料に過ぎないと整理している。そもそも民主・共和両党の候補がこぞって左傾化し、保護主義色を強めた今回の大統領選挙の勝者がドル高を容認するということは考えにくい。たとえクリントン氏が勝利しても2017年は円高ドル安の公算が大きかったと思われる。
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