まさか――。11月9日未明、英国に住む誰しもがそう思ったに違いない。いや、英国に限らず世界中の人がそう思ったのかもしれない。
人種差別的発言や女性や少数民族への偏見に満ちた数々の言動で知られる、共和党候補ドナルド・トランプ氏が、前国務長官のヒラリー・クリントン民主党候補に勝ち、第45代米大統領に就任することが確実となったからだ。
不動産王としての存在やリアリティー番組の司会者として英国でも著名なトランプ氏だが、英国では長い間「暴言を吐くとんでもない人物」という認識が一般的だった。その支持者は「教育程度の低い米国人」であり、共和党候補になってからスキャンダルが暴露されても支持が減らない状況を見ても、「米国には知的レベルの低い人が多いなあ」というのが英国知識人の認識であった。
しかし、その「まさか」が実現してしまったのである。
保守系新聞はトランプ新大統領を歓迎
英メディアのトランプ氏当選報道は、大きく3つに分かれた。
当選を歓迎したのは、保守系の大衆紙だ。トランプ氏は「米国をもう一度偉大な国にする」と選挙運動中に何度も述べた。このフレーズは英国で6月に欧州連合(EU)を離脱するか残留するかの国民投票が行われた際に、離脱派の政治家が繰り返した「英国を取り戻そう」、「投票日を英国独立の日にしよう」に見事に重なる。トランプ支持者も英国の離脱派支持者も「白人・中高齢者・教育程度が高くない・既存メディアを信じない」といった点で共通している。
そこで、トランプ候補の当選をもろ手を挙げて歓迎したのは国民投票でEU離脱を支持したデイリー・メール紙、サン紙、デイリー・エクスプレス紙だった。
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