海の森水上競技場には何が埋まっているのか 東京湾に70以上もある人工島の正体

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中防大橋と外側埋立地、奥に見えるのが新海面処分場

そしてこの外側埋立地には、まだ海面だけの場所があります。「新海面処分場」、通称「5代目夢の島」です。これが東京の、本当のゴミ最終処分場となります。というのはここがゴミで満杯になってしまうと、東京都はもう湾内のどこにも処分場を造れないからです。

都が使える海は荒川の河口から一直線上に引いた線と、多摩川の河口から一直線上に引いた線の中だけに限られ、それ以外は神奈川県と千葉県の所有となります。なにより東京湾というのは何万トン級の巨大船舶の通り道なので、これ以上むやみに埋立地を造ることができないのです。

さらにそんな「5代目夢の島」も、あとわずか50年で許容範囲を超えてしまうそうです。しかもその先東京から出るゴミの行方に関しては、今のところ何のビジョンもないといいます。何とも不確かで、不安だらけの未来ではないでしょうか。

人工島には造った人の「思い」がある

『東京湾諸島』(書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします)

ともあれ、東京湾には70島余りの人工島が存在します。一度、地図やグーグルマップを開いて探してみてください。千葉、東京、神奈川3県の湾岸部を注意深く眺めていくと、なにやら不自然なほどに一直線の海岸線や、角ばった土地が海ぎわにびっしりあることに気づくはずです。それらがすべて、人の手によって造られた島々です。

自然の力によって生まれた自然島とは違って、人工島にはそれを造った人々がいて、彼らの意思と思いが残されています。歴史があり伝承があり、信仰があり怨念があるかもしれません。理念があり希望があり、失われたものの数だけ都市伝説が残されました。

さあ、あなたもそんな「東京湾諸島」の旅に、出掛けてみてはいかがでしょうか。

加藤 庸二 フォトジャーナリスト

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かとう ようじ / Yoji Kato

写真家。島のスペシャリスト。大学在学中からドキュメンタリー映画制作会社、水中撮影のプロダクション、出版社勤務を経て撮影活動に入る。1980年、29歳でフォトグラファーとして独立し、加藤庸二写真事務所を開設。その後、編集人とダイビングフォトグラファーとしてダイビング雑誌『ダイバー』に参加する。1988年、写真撮影・映像制作・出版企画、フォトライブラリーの株式会社ワイドビジョンを設立。島と海洋分野を中心に取材執筆活動をおこなう。同時に辺境地などの自然、民俗、伝統、食文化にいたる幅広い分野で取材活動を展開。とりわけ 「島」 をテーマとする分野では、国内の上陸可能な有人島すべてを踏破した島のスペシャリスト。1951年生まれ。東京都出身。明治大学卒。日本写真家協会会員。主な著作に『島へ』(講談社、1996年)、『原色日本島図鑑』(新星出版、2010年)、『原色ニッポン南の島大図鑑』(CCCメディアハウス、2012年)、『日本百名島の旅』(実業之日本社、2013年)、『島の博物事典』(成山堂書店、2015年)ほか。

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