日本顔負け。アメリカの「超学歴社会」 アメリカは学歴による「階級社会」の国

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第2次大戦後の新設大学設立ラッシュ

では、なぜアメリカの学歴社会は変わったのか?

それは、第2次大戦以後、中流以下の人々の強い上昇志向が、教育の民主化、自由化を推し進めたからである。つまり、「大学卒」というタイトルを人々が争って求めるようになり、新設大学が次々と作られたからだ。その多くは州立大学や公立大学で、これらの大学はあらゆる階層の人々を受け入れ、さらに、女性が大量に大学に進学するようになった。

こうなると、アイビーなどの名門大学も、すべての階層に門戸を開き、高等教育競争(優秀な学生の獲得)に勝ち残る必要があった。

ハーバードの例で言えば、1952年の入学者はその10%がプレップの卒業生だったが、1960年には入学者は、全米各地のパブリックスクール(公立高校)の卒業生に分散するようになった。それとともに、入学の基準になるSATスコアも上昇した。

こうして、アメリカは現在のような実力による学歴社会に大きく変わったのである。その結果、全世界から留学生が集まるようになった。私たち日本人も受け入れられるようになったわけだ。

ただし、大学数が飛躍的に増えたために、高等教育のインフレ化が進んだ。

フィスクが暴露した高等教育のインフレ

この高等教育のインフレ化を暴露したのが、今でもアメリカの大学進学のバイブルとして有名な『ザ・フィスク・ガイド』(The Fiske Guide to Colleges)だ。私も娘がハイスクールに入ったときから、この本を徹底的に読んだ。そうして、アメリカの大学のランキングを知った。

たとえば、公立大学でもUCバークレーはアイビークラスの一流名門大学であること。校名に州立がつく州立大学のほとんどは、レベルが低いこと。さらに、その校名に「北」Northとか「南」Southとかの方角がつけば、もっとレベルが落ちることなどだ。

『ザ・フィスク・ガイド』は、1982年、当時『ニューヨーク・タイムズ』紙の教育担当記者だったエドワード・B・フィスクが、取材・調査によって初めて全米の大学を格付けした本である。フィスクが採用した方式は、ホテルやレストランに使われていたミシュラン方式の「五つ星から一つ星まで」の格付け法だった。つまり、彼は、それまで誰もが漠然と感じていたことを数値化してしまったのである。

このとき、フィスクが「五つ星」をつけた主な大学は、アマースト、ウィリアムズなどのリベラルアーツの一流校、ハーバード、プリンストンなどのアイビー・リーグの一流校、それにスタンフォード、シカゴなどだった。そして、「四つ星」にはボードウイン、ヴァンダービルトなどが入った。ところが、「三つ星」をつける段になって、フィスクはあることに気がついた。それは、学問・教育レベルから見て「三つ星」をつけられない大学が過半数に達しているということだった。

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