学歴で大きな差がつく初任給
フィスクは、信念を持ったジャーナリストだった。だから、彼は自分の調査結果に基づき、「二つ星」「一つ星」大学を実名で公表した。すると、「二つ星」「一つ星」がついた大学、たとえばタスキーギ大学、テンプル大学、オハイオ・ウェスレヤン大学などから、猛烈な抗議が来た。しかし、こうした抗議にひるまず、『ザ・フィスク・ガイド』は今でも刊行されている。
1960年代の初め、アメリカの大学進学率は約10%だった。それが、半世紀後の今は50%を軽く超えている。しかし、フィスクの格付けから見ると、今でも本当の進学率は10%と考えられる。
なぜなら、50-10=40で40%の学生は、じつは大学とは呼べないフィスクの「三つ星」以下の大学に行っているからだ。これが、高等教育のインフレ化現象である。
だから、グローバルエリートを目指すなら、少なくとも「三ツ星」以上の大学を目指すべきだ。当のアメリカでも「二つ星」以下の大学の卒業生は、就職やその後のビジネスキャリアでは大きなハンデがある。同じ「大学卒」でも、学位を取った大学や大学院によって、収入が大きく変わってくるからだ。
たとえば、4年制大学卒の平均初任給は、NACE(National Association of Colleges and Employer:全米大学経営者協会)の資料によると、一流大学卒と最下位大学では約2倍の開きがある。これが、人気の大学院卒業資格であるMBAになると、ハーバードやMIT(マサチューセッツ工科大学)などの超一流大学MBAと州立大学MBAではもっと差が開く。
ただし、アメリカで学歴が通用するのは、入社時のみだ。その後は「成果主義」だから、名門一流大卒だろうと成果を上げなければ、州立大卒に追い越されてしまう可能性がある。こうして、アメリカ社会では競争はずっと続く。
ところが日本では、どんな大学を出ようと初任給に差はない。これは、高等教育のレベルの違いを無意味化する悪しき平等主義と言えるだろう。
※ 6月12日(水)掲載の次回記事で、さらに詳しくアメリカの学歴社会を解説します
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