特定分野でネイティブを超える
また、これは私の持論なのですが、日本人が英語のネイティブスピーカーと同じように話そうと思ってもなれないんです。われわれは日本語のネイティブスピーカーなので、英語がネイティブ並みに話せないのは恥ずかしいことではありません。ただし、日本人だろうが何人であろうが、ある特定の分野だけであれば、英語ネイティブを超えられるのです。「ここだけならネイティブにも負けないよ」という分野を作ることが可能なんですよ。
これは英語を学習するときの気構えのようなものですね。松本先生は「ただネイティブスピーカーを目指すのではなくて、ネイティブでも教養のある、高いレベルを目指しなさい」とおっしゃっていましたが、私はちょっと言い方を変えて「ネイティブを超える」というようなことを偉そうに言っているんです(笑)。
特定の分野はその人の特性ややりたいことで変わってくるでしょう。プレゼンテーションでは負けないとか、英語で友達を作ることに関してはナンバーワンだとか、いろいろあるでしょう。
そこに行きつく前に、まず基本的な姿勢としては、一概にネイティブスピーカーと言ってもたくさんのレベルがあるので、ネイティブスピーカーの中でもすばらしいものを吸収しようとすることが大切だと思います。
たとえば世界を変えるようなスピーチには、表現、ロジカル、構成、言葉の裏にある魂など、いろいろな側面から見てすばらしい要素があるものです。そういったものに触れることによって、違ったレベルの英語力が身に付いていくのです。
今になって思えば当時の私たちは、自分のレベル+ネイティブスピーカーでさえ学びたくなるような高度な英語に最初から触れるという2本立ての学習を通じて、英語力を伸ばしていたのです。
安河内:ケネディのスピーチを朗唱しながら、自分のレベルの英語の補強をしっかりやって、そのギャップを埋めていかれたんですね。片方だけでなく、自分の身の丈に合ったレベルと難解なレベルの両方を同時にやることが、英語力を伸ばすキーだったわけですね。
石渡:最初は松本博士の会話本とケネディの演説の朗唱をやったのですが、進めていくうちに、英語がどんどん覚えられるようになっていったのです。覚えられるようになると、貪欲にいろいろなものに挑戦したい気持ちが生まれました。そこで、松本博士に勧められて、中学校3年分の教科書の朗唱もしました。これをやったときは、全文がすっと頭に入っているぐらいに簡単に理解できて、うれしかったですね。
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