1986年、衆参同日選に執念を燃やす中曽根首相が狙いどおり実現して「針の穴解散」と呼ばれた。
解散の前に、最高裁の違憲判決を受けて1票の格差是正のための公職選挙法の改正が行われ、30日の周知期間が設定された。その結果、暦の上で、同日選実施には、可能な投票日はわずか1日だけとなった。「針の穴をラクダが通り抜けるような困難さ」と言われたが、中曽根首相はその日の同日選に持ち込む。「針の穴解散」を実現したのだ。
27年後の現在、これと同じことが、という情勢となってきた。4月23日、衆議院本会議で「0増5減」法案が可決し、参議院に送付された。野党の反対は強いが、昨年末の総選挙に関する1票の格差問題での違憲判決続出を受けて、自民党は違憲状態解消優先の方針で走る構えだ。参議院は与党過半数割れのため、「60日ルール」による再可決方式を使うと、最短で会期末の5日前の6月21日に衆議院で再可決して成立させることができる。
この動きを見て、安倍首相の狙いは今夏の衆参同日選では、と読む人もいる。
違憲訴訟の最高裁判決は今秋といわれているが、昨年末の総選挙の有効性が問われている以上、「0増5減」法案成立だけでは不十分で、最高裁判決の前に新区割りで総選挙を、という話になる可能性がある。
絶好調の安倍首相が「秋までに総選挙」と枠をはめられたら、「7月21日の投開票」といわれる参院選との衆参同日選が有利と判断しても不思議はない。同日選には公明党の反対という壁があるが、宿願の憲法改正のために「改憲勢力で衆参3分の2の確保」を第一に考え、「衆参圧勝」をもくろんで同日選を仕組むかもしれない。
だが、簡単ではない。「7月21日の同日選」だと、総選挙の公示は7月9日、1週間後の「7月28日の同日選」なら7月16日だ。
新区割りに30日の周知期間を設定すると、「60日ルール」を使った場合は、改正法案の施行は7月20日以降となり、間に合わない。改憲実現のために同日選を、と安倍首相が考えるなら、中曽根元首相のような「針の穴」を通り抜ける妙案と策略、闘魂と胆力が必要だが、持ち合わせがあるかどうか。
(撮影:梅谷秀司)
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