中国太陽電池大手、"おいしい"日本市場狙う 業績不振のJAソーラー、出荷量倍増で攻勢

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過剰生産能力は解消せず、欧米との通商摩擦も激化

ただ、根本的な過剰生産能力の問題は解決できておらず、中国メーカーを取り巻く環境は依然、厳しい。全6工場をすべて中国国内に置くJAソーラーの生産能力は現在、モジュールが1.8ギガワット、セルが2.5ギガワット、ウエハが1.0ギガワット。これに対し2013年の出荷高を会社側はモジュールとセルを合わせて1.7~1.9ギガワットと見込む。

業界全体としても需給の不均衡はなお激しい。2013年の世界の出荷高は中国、日本、インドなどアジア諸国が伸びるものの、これまで世界市場を牽引してきたドイツ、イタリアなどの欧州は導入支援策縮小から大幅減少となり、全体では31ギガワットと前年比7%増にとどまる見通し。一方、実質的な生産能力は依然、業界全体で40~45ギガワットはあると見られている(米国ソーラーバズの予想)。

また、太陽電池をめぐる欧米と中国との通商摩擦も激化している。米国は昨年11月、中国製の太陽電池が政府の不当な補助金を利用して不当に安い価格で輸入されているとして、反ダンピング関税と相殺関税を課した。欧州委員会も昨年来、中国製品のダンピングに関する調査を行っており、6月ごろに懲罰関税を含めた対応を仮決定する見通し。これに対して、中国政府も報復措置をちらつかせている。

世界2位へ浮上する日本は外資にも“おいしい”市場

こうした環境下、中国メーカーも戦略見直しを余儀なくされている。すなわち、これまでの海外での主戦場だった欧米から、日本をはじめとした新たな成長市場への戦略シフトだ。

謝健・最高執行責任者(COO)は、「日本をはじめ、インド、タイなどアジア諸国のほか、イスラエル、モロッコなど中東、アフリカにも積極的に参入していく」と話す。

JAソーラーでは、2013年の太陽電池の国別出荷量について、中国は政府の支援策次第で変動が大きいものの、6~10ギガワットで世界トップとなり、次いで日本がFIT効果で昨年の2.5ギガワットから5ギガワットへ伸び、ドイツ、米国、イタリアを抜いて2位へ浮上すると見ている。

日本のFITによる太陽光発電の買い取り価格は、2014年度まで3年間は事業者の利潤に配慮される。そのため、13年度もキロワット時当たり税込み38円程度と、欧州に比べ2倍以上の高水準にあり、太陽電池の価格も海外に比べて2~5割程度高いと言われる。日本の太陽電池メーカーにとって「今がわが世の春」(国内大手)。当然、外資にとっても、これほど“おいしい”市場は世界のどこにもない。

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