苦節8年、昭和シェルの太陽電池が初の黒字 13年1~3月期、買い取り制度を享受

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ソーラーフロンティア製品の実際の設置事例

これまで昭和シェル石油の業績の足を引っ張ってきた太陽電池部門が、今年1~3月期に初めて黒字化(減価償却後ベース)したもようだ。会社側はこれまで今年7~9月期からの黒字化を計画していたが、再生可能エネルギー固定価格買取制度(FIT)効果を受けた、想定以上の出荷増によって黒字化計画を前倒しで達成した。

昭和シェルは100%子会社のソーラーフロンティア(2005年設立)を通じてCIS薄膜太陽電池事業を行っており、昨年までは海外での価格競争激化や国内市場の拡大の遅れ、重い設備投資負担などから赤字が続いていた。だが、12年7月にFITが導入され、初年度の太陽光発電の売電価格が1キロワット時当たり42円(税込み)と高く設定されたことを受け、メガソーラーを含む非住宅用を中心に太陽光発電市場への参入が一気に拡大。太陽電池メーカーへのパネル発注が急増している。

13年初からフル稼働、休止工場の再開も

ソーラーフロンティアでは、11年2月に本格稼働した主力工場の国富工場(宮崎県国富町、年産能力900メガワット)の設備稼働率が昨年までは6~7割程度だった。それが今年1月からはフル生産に突入、それでも受注に追いつかないほどになっている。3月末には休止していた宮崎第2工場(年産能力60メガワット)を7月から再開することを決めた。

主力の国富工場

販売先も大きく変わった。11年まではソーラーフロンティアの販売先は7割が海外で、残る3割のほとんどが国内の住宅向けだった。しかし、昨年からソーラーフロンティアは、過当競争の海外市場からFITが導入される国内へとシフトを強め、国内販売比率が6割に逆転。国内のうちでも昨年後半からは非住宅向けが圧倒的に多くなっている。

国内シフトと稼働率向上は採算を大きく好転させた。国内のパネル価格は現状、住宅、非住宅向け平均で1ワット当たり105~110円程度。昨年は横ばいで、昨年秋からは需要増を受け、強含みにある。過当競争で一貫して価格下落が続く海外市場に比べると、4割前後高い水準とされる。ソーラーフロンティアは、FITが生み出した大きな内外価格差の恩恵を、国内シフトによって享受している。

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