苦節8年、昭和シェルの太陽電池が初の黒字 13年1~3月期、買い取り制度を享受

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縮小

また、生産量の拡大に比例して、フレームやガラス、封止材など原材料の調達において価格交渉力(バーゲニングパワー)が増している。そのほか生産の歩留まり上昇や習熟度向上などによって、昨年中に売り上げ原価ベースで約20%のコスト削減を実現した。その結果、12年10~12月期には減価償却費(年間100億円程度)を除いたベースで黒字に転換、今年1~3月期にはついに念願の償却後ベースの黒字を達成したとみられる。

日本は中国に次ぐ世界2位の太陽電池市場へ

国内市場全体の太陽電池出荷量の見通しはアナリストの間で上方修正が相次いでおり、13年は昨年の約2倍にあたる5ギガワット程度とみられる。昨年は世界の国別で5位だった日本が、今年は中国に次ぐ2位に浮上する可能性がある。

一方、国内価格については、それほど落ちないとも言われる。FITの太陽光発電の買い取り価格は13年度から37.8円へ下がるが、太陽電池の出荷は当面、前年度の買い取り価格をベースとした設備向けが続くためだ。

もっとも今後は中国勢をはじめとした外資が、国内市場へさらなる攻勢をかけてくるとみられ、国内メーカーにとって「わが世の春」のような現況が長続きするとは考えられない。業界内でも「FITの優遇価格が続く3年間が限度」とみられており、数年先には海外と同様の激しい価格競争が展開される公算が大きい。

日本初の商業用メガソーラー「新潟雪国型メガソーラー」

ソーラーフロンティアとしても当面、工場は新設せず、今後数年で生産コストを12年末に比べて半減させることを優先課題として目指していく。さらに、研究開発を通じて多結晶シリコン系に負けない発電効率を目指すことで、競争力の維持強化を図る。3月からは合弁で自社製品を使ったメガソーラー事業を開始し、「下流事業」へ進出。日本政策投資銀行と組んでメガソーラー発電所のBOT(建設・運営・転売)事業にも乗り出しており、将来の海外展開にも生かしていく。

中村 稔 東洋経済 編集委員
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