米議会も総スカン、「TPPとん挫」の現実味 年内批准どころか先行きも見えない

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9月8日、ラオスで開かれたASEANビジネス投資サミットに参加したオバマ大統領とASEAN諸国の首脳(写真:Jorge Silva/ロイター)

約1カ月半後に迫った米大統領選。米国ではヒラリー・クリントン氏とドナルド・トランプ氏が接戦を繰り広げているが、目下アジア専門家の間で話題になっているのが、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)をめぐるホワイトハウスとクリントン氏の「確執」だ。

もちろん、オバマ大統領もクリントン氏も長年くすぶり続けているTPPに関する意見の相違をこれ以上悪化させたくはないだろう。「公的に『争う』ことは双方にとって大きなダメージになりかねない」と、ワシントンで影響力を持つニューズレター「ザ・ネルソン・レポート」を発行するクリス・ネルソン氏は言う。

だからといって、双方とも譲る気はないようだ。「私が知る限り、オバマ大統領は(任期中の)TPP批准に賭けている。仮に年内に達成できなくても、最終的にはTPPを成功に導く形にはしておきたいと考えている」と、ワシントンに拠点を置くシンクタンク、新アメリカ安全保障センター(CNAS)のアジア研究所長パトリック・クローニン氏は言う。

やる気満々のホワイトハウス

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一方、クリントン氏と主要アドバイザーたちは、これまでと変わらずレームダック会期中のTPP批准や関連する項目の採択について反対の姿勢を変えていない。ネルソン氏によると、クリントン氏は東アジアにおいて中国が発言力を増す中、TPPの地政学的重要性を理解はしているものの、政治的には反対するほか選択肢がない。「クリントン氏が、民主党員にとって極めて重要な存在である労働組合との関係を悪化させる危険を冒せないことは誰でもわかる。ゆえに、誰もこの件についてクリントン氏を責めることはできない」(ネルソン氏)。

ホワイトハウスのTPPに対するジレンマは、ここ数週間で非常にわかりやすくなっている。たとえば、ベン・ローズ国家安全保障副補佐官はオバマ氏が先月末、アジア歴訪へ旅立つ前の記者会見で、「この訪問は米国がアジア太平洋地域に力を入れていることを再び主張する機会となるだけでなく、この地域における米国の経済的及び戦略的なリーダーシップの最重要項目としてTPPに賛成することを表明する機会にもなる」と語った。

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