日本国民の選択「与党圧勝」に米国が抱く不安 安倍政権への信頼感は高いが…

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与党圧勝に終わった参院選に米国は胸をなでおろしている反面、不安も感じている(写真: Toru Hanai/ロイター/アフロ)

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連立与党の大勝利となった参議院選。米国の日本専門家の多くは、米国と欧州で反政府ムードが高まる中、日本だけは「政治的に安定した国」だという確認ができたことに胸をなでおろしている。

「安倍晋三首相を支持する自民党と公明党の大躍進は、アジアと世界で積極的な役割を努めてほしいと望む米国人にとって、基本的には朗報だ」と、米国務省元日本部長のラスト・マクファーソン・デミング元駐日首席公使は話す。「米国が次期大統領選に伴ってレームダック期に突入し、EU(欧州連合)が存続の危機に直面している中、国際社会は比較的広く強い権限を持った政府を擁する民主主義の先進国を必要としている」。

米国が安倍政権に望むことは

連立与党は国会の両院で確固たる支配力を有し、また自民党内にも「政敵」がいない状態だ。こうした中、米国側は安倍首相が、行き詰まりを見せている経済改革に改めて向き合い、全精力を注ぐよう期待している。

「新たな財政刺激策や環太平洋戦略的経済連携協定(TPP) の批准、労働や移民分野における構造改革、さらに人口減の問題などが安倍首相のトップアジェンダになるべきだ」とデミング元首席公使は語る。「日本が自国経済と社会の再活性化に成功し、地域的及び国際的な役割を拡大させることが、自由主義的国際秩序を維持したい米国やほかの国々の利益となる」。

「アベノミクスは宣伝されているほどまだ効力を発揮しておらず、英国のEU離脱の影響から円高も一段と進行している。が、日本は目下、世界経済の向かい風の中を突き進んでいることを考えると、経済政策を推し進めることは容易ではないだろう」と、日本に詳しいある米高官も話す。

一方、今回の選挙結果は米国側に2つの不安を抱かせることとなった。一つは、安倍首相が経済政策と同じくらいかそれ以上に「成し遂げたい」と考えているものがあることだ。「平和憲法の改正及び戦後レジームからの脱却を果たすことで、安倍首相が自らの名を歴史に残したいと考えていることは誰にも明白だ」と、前述の高官は言う。

仮に同政権が戦後の歴史的秩序を変えることに力を入れ始めれば、中国や韓国からの激しい反発を引き起こす可能性があり、ここ数カ月地域的安定に向けて行われてきた取り組みが一気に台なしになってしまう。

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