日ロが平和条約?そんな簡単なことではない 安倍-プーチン会談に過大な期待は禁物

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9月2日、東方経済フォーラムで挨拶を交わす日ロ両国首脳。年末にかけて首脳会談を連続的に開催することで合意した(写真:Kremlin/Sputnik/ロイター/アフロ)

日ロ首脳の関係が急接近している。安倍晋三首相は9月2日、ロシアのウラジオストクにおいて「東方経済フォーラム」に出席する機会を利用してプーチン大統領と会談。11月にペルーで開催されるAPEC(アジア太平洋経済協力会議)の際にも再度会談することになった。

さらにプーチン大統領の訪日が実現し、12月15日には首相の地元である山口県長門市で日ロ首脳会談が開催されることも合意された。平和条約締結に向けて大きく動き出すのではないかとの見方もあるが、道程はそれほど簡単ではない。それは、なぜなのか。これまでの経緯から振り返っていきたい。

「新しいアプローチに基づく交渉」へ意欲

安倍首相は9月2日の会談後、次のように述べている。

「プーチン大統領とは、(中略)ゆっくりと時間をかけて議論を行いました。特に、平和条約については、2人だけでかなり突っ込んだ議論を行うことができたと思います。新しいアプローチに基づく交渉を今後具体的に進めていく。その道筋が見えてきた、その手応えを強く感じ取ることができた会談だったと思います。70年以上にわたって平和条約が締結されていない、この異常な状況を打開するためには、首脳同士の信頼関係のもとに解決策を見出していくしか道はないと思います」。今回の会談は実りあるものだったと見てよいだろう。

領土問題という難交渉を行うには政権が安定していることが必要だ。北方領土を解決して平和条約を結ぶため歴代の首相は様々な形で努力を重ねてきた。しかし、交渉がこれから本格化するという段階になって中断、あるいは頓挫してしまうことが何回かあった。そうなったのはいくつかの原因によるが、そのうちの一つは、残念ながら、日本の政権が短期間でコロコロ替わったことであった。ソ連邦が崩壊して以降、ロシア連邦の大統領は3人しかいないが、日本の首相は15人であり、平均在任期間は2年に届かない。

安倍首相はプーチン大統領から信頼されていると言われている。同大統領には、安倍政権が安定しており、真の交渉相手となりうるという期待感があるのだろう。

しかし、今後、平和条約交渉が順調に進む保証はない。

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