「黒田新総裁」誕生でも、4月は円高ドル安に? 市場動向を読む(為替)

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だが、その顕著な例外が日銀が量的緩和を実施した2001~2006年である。この時、日銀が供給する円資金の量が、FRBが供給するドル資金の量を上回って増加したものの、ドルは対円で、2002年初に1ドル=135円台でピークをつけた後、2005年初に1ドル=101円台のドルの安値をつけるまで値を崩した。

なぜ、このときは、日銀の量的緩和にもかかわらず、円高が進んだのか?

その答えはFRBの金融政策にある。つまり、その頃、ITバブル崩壊後の米国経済の低迷に対処するために、FRBが果敢な金融緩和を断行。その間にFF金利(政策金利)を6.5%から1.0%まで引き下げたのだ。このFRBの利下げに伴って、為替市場では急速なドル安が進行した。それに対処するために、利下げ余地を持たない日銀が苦肉の策として導入したのが量的緩和策であったが、ドル安円高を止めることはできなかった。

ドル円相場が強い相関を示すのは日米の市場金利差

このことが示唆するのは、金利政策や市場金利が変化すると、為替市場では量的緩和の効果が打ち消されてしまうということである。確かに、2007年以降のドル安円高は、日米のベースマネー比率の変化(端的に言えば、FRBによる量的緩和の拡充)に伴って進んだように見える。

だが、この間、ドル円がより強い相関を示したのは日米の市場金利差である。FRBの量的緩和は、米市場金利を歴史的な低水準へ押し下げたという意味ではドル安円高圧力を生んだかもしれないが、量的な側面がどれほどドル安圧力を高めたかは不明瞭である。

実際、この間、ユーロなどに対して反発した米ドルは、通貨インデックスで見ると、FRBの量的緩和拡充にもかかわらず、むしろ2002年以降の長期的なドル安トレンドを脱し、底入れに転じる動きを強めてきたのである。

次ページ当面は日米のベースマネー倍率はドル安円高を示唆
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