“黒字化"でも続くシャープ綱渡り経営 資金繰りは結局、外部頼み

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資金繰りの懸念も消えない。

昨6月末時点で約3600億円あったコマーシャルペーパー(CP)は急減し、現在ほぼゼロになっている。CP減少分を主力2行による計3600億円の担保付き融資で賄ったが、その返済期限が6月末に到来する。まずは融資の継続条件である「今下期の営業黒字化」をなんとしても達成する必要がある。

9月末には、新株予約権付社債(CB)2000億円の償還も迫る。近々に発表される中期経営計画ではCB償還策についても説明しなければならない。

シャープは海外テレビ3工場など資産売却先探しに加え、鴻海に代わる複数の外資系企業と交渉を続けている。昨年末には、半導体大手の米クアルコムから約50億円の出資を取り付けた。「破談と報じられたが米インテルとも当然話は続けている。(業績が低迷しているので)どの企業からも足元は見られるが……」と幹部は悔しさをにじませる。

資金面でのハードルが次々と到来するシャープ。追い風があるとすれば昨年末の政権交代だ。

安倍晋三政権は、経済の再生を最優先の「一丁目一番地」と位置づける。産業競争力会議を設置するなど、企業支援に積極的な姿勢を示す。

奥田社長は国の支援について「われわれ製造業にとってたいへん心強い」と期待を膨らます。経済産業省には奥田社長や片山会長、財務担当の大西徹夫専務らがかわるがわる訪れてもいる。

今のところ緊急経済対策として提示されたのは設備投資補助金など、横並びのパッケージだけ。しかし過去には個別企業の救済を念頭に置いた施策も実行されてきた。モラルを問う声も多い一方、シャープ関係者はその動向を注視している。

週刊東洋経済2013年2月16日号

前野 裕香 ライター

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まえの ゆか / Yuka Maeno

1984年生まれ。2008年に東洋経済新報社に入社し記者・編集者として活動した。2017年にスタートアップ企業に移り、広報やコンテンツ制作に従事。現在はフリーランスライターとしても活動中。

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