“黒字化"でも続くシャープ綱渡り経営 資金繰りは結局、外部頼み

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第3四半期の営業損益改善に大きく寄与したのは、上期に実施した約1100億円もの会計処理である。アクオス用パネルを中心とした在庫評価減や生産設備の減損で、下期以降の負担が軽減。効果は第3四半期だけで約500億円に上った。

ただ、中核である液晶事業の現状は到底楽観できない。

亀山第1工場のアイフォーン5用パネルは、昨秋時点でフル生産だった。だが、アップルの生産調整を受け、年明け以降は「ピーク時の半分以下」(シャープ関係者)に落ち込んでいる。底入れの時期は「期待を込めて来期初」(同)だという。

亀山第2工場は、最大案件であるアイパッド用パネルの生産が12月以降ぴたりと止まってしまった。アイパッドの売れ行きが急失速したためで、「本格再開のメドは立っていない」(同)。

アイパッドの代わりに第2工場で受注したのが韓国サムスン電子向けの32型テレビ用パネル。この受注により、第2工場の稼働率は5割強を維持している。

とはいえ、安値受注で採算は取れていない。シャープ関係者は「受注獲得のためのサンプル出荷にも部材購入費がかさむ。銀行から新たな借り入れができない今、少々の売却損よりキャッシュの獲得が重要」と苦しい事情を打ち明ける。

シャープは付加価値が取れる製品で工場稼働率を上げたいと、セットメーカーに対してIGZO液晶を売り込んでいる。しかし、高価格が嫌気され思うように進んでいない。

迫る「3・26」

昨年3月、シャープは鴻海(ホンハイ)精密工業(台湾)から669億円の出資を受ける契約を結んだ。が、出資条件をめぐる交渉が暗礁に乗り上げたまま。出資期限の3月26日が迫る。

それを見越してか、昨秋にシャープがみずほコーポレート銀行と三菱東京UFJ銀行の主力2行に提出した「18カ月プラン」(12年10月~13年3月)には、鴻海の出資が含まれていない。「鴻海はシャープに複数の要望を出したが反応は薄い」と関係者は明かす。奥田社長と郭台銘・鴻海董事長とのトップ会談も実現しておらず、鴻海の出資は流れる可能性が高まっている。

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