成果を出す人は「ムダな問題意識」を持たない 「ミニマル思考」でストレスから身を守れ

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実際、下請けや孫請けなど業務請負の構造が複雑になってくると、自分に修正・訂正を求めてきた担当者は単に上からの指示を伝言しているだけ、ということも多いものです。そうなるとなおさら目の前の人の言葉の意図を勘ぐって気を揉むのはムダなこと。伝えられた事実だけを受け取りましょう。「直してほしい」は「クレーム」ではなく単なる「リクエスト」です。

ミニマル思考でストレスを寄せ付けない

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「相手の言葉の裏を勘ぐるな」というのは「相手の気持ちを察する」という古来のコミュニケーション・マナーに反しているように見えるでしょう。確かに他人の気持ちを「察する」ことは日本人の美徳だったかもしれませんが、それは日本の会社が同質社会だった時代の話に過ぎません。

もはや仕事関係者の国籍がみんな違う時代です。アウトソーシングが増えると「社風」は通用しません。正社員と契約社員では仕事へのコミットの仕方が異なります。このように共通項のない人とのコミュニケーションで最も重要になるのは「事実を正確に伝えること」そして「事実だけを淡々と受けとること」。「察すること」「空気を読むこと」に依存してはいけないのです。

いま日本では労働者の8人に1人が心を病んで退職するといわれています。人員も予算も削られて効率ばかりが求められるギスギスした時代、ビジネスパーソンにとって大切なのは「ノルマを達成すること」よりも「ストレスから自分の身を守ること」です。

そのためにも、「成果につながらないムダな問題意識」で怒ったり悩んだりするのをやめましょう。正義感、不公平感、被害者意識、好き嫌い、犯人探し、不安、憶測、後悔……これらの「ガラクタ」を頭の中から削ぎ落とすことができれば、それだけでムダな議論に時間を奪われることがなくなります。的外れな仕事をして周りに迷惑をかけることもなくなります。言葉の裏を勘ぐって人間関係に苦しむこともなくなります。

そして、実利と実害につながる問題だけに目を向ける。これが成果を出す人の考え方です。チャンスをいち早くとらえる人、問題にいち早く対処できる人というのは何も複雑な論理思考を展開しているわけではありません。ムダな問題意識を捨て、考えることを最小限(ミニマル)に絞れば、物事の本質がよく見えるようになるでしょう。

(構成:山岸美夕紀)

鈴木 鋭智 株式会社キャリア・サポート・セミナー顧問講師

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すずき えいち

株式会社キャリア・サポート・セミナー顧問講師。ロジカルコミュニケーション・コンサルタント。1969年青森県生まれ。東北大学大学院文学研究科修士課程修了(認知心理学専攻)。
大手予備校講師時代、小論文を「文章表現ではなく問題解決能力の試験」と再定義することによって合格率を倍増。その過程で「ミニマルシンキング」「3Dの法則」など独自の論理思考メソッドを開発する。そのノウハウをまとめた受験参考書『何を書けばいいかわからない人のための 小論文のオキテ55』(KADOKAWA)はロングセラーとなり、台湾ではビジネス書として翻訳出版される。
現在は企業研修やビジネスセミナーにおいて「ロジカルな話し方、書き方、議論の仕方」を指導する。
おもな著書に、『仕事に必要なのは、「話し方」より「答え方」』(中国語版タイトル『回話的藝術』)、『何を書けばいいかわからない人のための 小論文のオキテ55』(同『寫作的技術』)、『何を準備すればいいかわからない人のための AO入試・推薦入試のオキテ55』、『何となく解いて微妙な点数で終わってしまう人のための 現代文のオキテ55』(以上、KADOKAWA)、『公務員試験 無敵の論文メソッド』(実務教育出版)、『ミニマル思考 世界一単純な問題解決のルール』(かんき出版)がある。

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