スタイリスト「地曵いく子本」が"刺さる"理由 ズバズバ口調の「おしゃれ指南本」は写真なし

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――私たちは、欲しいものを買える恵まれた環境にあります。

だから、恵まれすぎてわからなくなっているのかも。少しくらい不自由なほうが工夫もしますよね。実は、去年ロンドンに滞在して痛感したことがある。去年は1ポンド200円くらいで物価が倍ぐらいに高騰した印象があって。そうするとガンガン買えない。食事も、レストランでオーダーするときに考える。以前だったら、あれもこれも食べちゃおうと思っていたのが、思わなくなる。洋服も高いと、これが本当に必要かと考える。今の日本にないのは、これだなと思いました。

便利さにみな疲れちゃっているのよ

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さらに、海外では何か買うときに手間がかかることが多い。「ちょっと待て」「レジはあっち」とか。そうすると、面倒くさくなって買うのを止めることもある。でも、日本だとスムースにワンツースリーで買えるじゃないですか。ちょっと待って考えるというプロセスがなくなって、インスタントに買える。インスタントはいい面もあるけれど、その便利さにみな疲れちゃっているのよ。今は、自分でコントロールすることが必要。自制心が求められている。

――ずっとスタイリストとして仕事をされてきたんですね。

本当はメイクの仕事をしたかったのですが、アシスタントのバイトをしていた集英社の職場が居心地よくて、就活しそびれたんです。怖いものなしの性格で、「それはダサいんじゃないですか」とか正直に言っていたら残っていた。仕事は辞めなければ続けられます。あるとき、何かを手離すと「次が来る」ことがわかった。変わることを恐れなくなり、それがよかったのかもしれない。しがみついていたらもう少し辛かったでしょうね。服も男もみなそう。

――男もですか(笑)。最後に、おしゃれな人とは。

男女共通して言えるのは、似合わないものを着ていない人。おしゃれってそれだけ。おしゃれなクールアイテムをいっぱい着ていても、変に透けているような靴下をはいていたら「はい、ごめんなさい」みたいになるでしょ(笑)

高橋 志津子 東洋経済 記者

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たかはし しづこ / Shizuko Takahashi

上智大学法学部国際関係法学科卒。東洋経済新報社に入社後は、会社四季報、週刊東洋経済、ムック、東洋経済オンラインなどさまざまな媒体で編集・執筆を手掛ける

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