韓国で人気の魚市場、「移転問題」で大モメ レトロな雰囲気が観光客から好評だったのに

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水協は築45年の旧市場の建物が、安全でも衛生的でもないとしている。だが、魚商人たちは新しい建物への苦情を相次いで口にする。割り当てられた区画が小さすぎるのに加え、床が滑りやすく(筆者も二度転びそうになった)、通路が狭すぎ、地代が高すぎる、というのだ。そして最も重要な点は、訪問客にとって、旧市場が持っていた色々な雰囲気が欠けていることだと語る。

一方、水協は、魚商人たちと完璧なほどによく協議したし、地代も区画の大きさも前と同じであり、2009年に魚商人のすべてが移転同意書にサインした、と主張している。

新市場の2階で魚の干物を売る店 (写真: 2016 Jo Turner)

「水協が伝統的な建築物を再建する気はないことは、現実として認めなければなりません」。しぶしぶ新市場に移転したというソン・ヨンヒ(39)は、区画が狭すぎて魚を並べるのは「ほとんど不可能」だと不満をこぼす。

それでも彼女は、水協が移転を撤回するとは考えていないし、生計を立てねばならない。「私はしなければならないことをしなければならないのです」と彼女は言う。この問題は現在、裁判で争われている。

旧市場には伝統と開放感

鷺梁津での観光客のお気に入りは、新鮮な海産物を目の前でさばいてもらって、市場に多数ある食堂で調理してもらうことだ。旧市場では、全ての食堂のシャッターは閉まり、スプレーで落書きが描かれ、水協によって電気と水道が止められている。新市場の食堂は開業してはいるが、閑散としている。

カナダのトロントからの観光客、ステラは新市場で魚を買い、2階の食堂で食べた。しかし、彼女はむしろ旧市場に行って、閉鎖された食堂の雰囲気に浸ってみたいと語った。「私の友達は旧市場の食堂の写真を見せてくれました。もっと選択肢があってもいいんじゃないかな」。

旧市場では、日本から来た女性2人が、カニを見ながら新旧2つの市場について話していた。1人は「私は新市場が好きよ。とても清潔だから」と言った後、こう付け加えた、「あそこに全て(の魚商人)が移転するのは無理ね」。彼女は旧市場が、より伝統的であることには同意した。「旧市場はもっと安くて大きいから、韓国人に好まれるんだと思う」。

ジャ・ハンギは兄弟で24時間のシフトを分け合っている魚商人だ。厳しい仕事だが、25年かけて慣れた。彼は新市場には移れないと言う。「お客は開放的な空間とスタイルを持った、旧市場の建物を好んでいる」からだ。

地元のツアーガイド、ジェイク・ヨーも同意見だ。彼は両方の市場を訪れる時間はないツアーで、観光客は明らかに旧市場を選ぶと語る。「ここにある伝統的なスタイルは、より良いものなのです」。

執筆: Dave Hazzan (Zester Daily/Reuters)

(敬称略)

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