韓国のお年寄りは、地下鉄で宅配をしている 無料パスを活用、「安価で丁寧」と評判は上々
「この時間のエレベーターは私のような老人であふれていて、待っているだけで時間がかかる。(時間が)もったいないから階段で行きましょう」
そう言って、見上げるように続く長い階段を黙々と上がっていく。
朴さん(76歳)が地下鉄宅配の仕事を始めたのは2年前だ。
「野球を見るほかにはこれといった趣味がなくて、区の福祉館に行ってあれこれやってみましたが、時間が一向に進まない(笑)。妻は孫の面倒などで忙しいし、外に出て何か仕事がしたい、そう思いましてね。でも、70歳を過ぎた私ができる仕事がなかなかない。それで区庁に相談したら、地下鉄宅配の今の会社を紹介されたんです」
地下鉄料金無料の高齢者を活用
「老人地下鉄宅配」は文字どおり、高齢者が地下鉄を利用して、主に重量の軽い書類や衣類などを宅配するサービスだ。65歳以上は地下鉄乗車が無料なため経費が削減できる分、宅配料も低廉に設定できる。これに目をつけた業者が10数年前から始め、「老人地下鉄宅配」「お年寄り地下鉄宅配」の名で呼ばれるようになり、今ではインターネットで検索するとおびただしい数の会社がずらりと並ぶほどの激戦ぶりだ。
2004年からは行政も高齢者の社会とのつながりや生きがいなど「QOL(クオリティオブライフ)」という観点から参入し、ソウル市では25区のうち9区で傘下機関が運営。名称も「ジェントルマン宅配」や「コツコツ歩く宅配」など。全体で288人(2016年6月10日現在)の高齢者を雇用している。
朴さんは区庁から紹介を受けるとさっそく会社に連絡。簡単な面接(健康状態など)の後、宅配システム、会社からどう連絡を受け取り、品物をどう運ぶか、また領収書の書き方などについての研修を1週間ほど受けた。
「始めた頃は慣れないから1年で5㎏ぐらい痩せました。でも、この仕事をするようになってから、よく眠れるようになって、持病の糖尿も数値がよくなって薬が減ったんですよ。今は体の調子がすごくいい」
どれほどの運動量なのだろうか――。1日に平均で5カ所ほど回るという朴さんの地下鉄宅配に同行してみた。
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