「円安・株高・債券安」の進行は終了へ 市場動向を読む(債券・金利)

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市場の関心は今、円安・株高・債券安の持続性にある。

筆者は次の2つの理由で、『すでに一戦終了。さらなる円安・株高・債券安が進行する可能性は当面低く、各相場とも年度末にかけて概ね横ばい圏で推移する』とイメージしている。

脱デフレの達成はすでに織り込み済み

そう考える理由の一つは、スピード調整が起きた、というテクニカルな要因に基づく。1カ月余りという短期間における約1割のドル高/円安、2割弱の日経平均株価の上昇、0.15%の長期金利上昇という相場急変は、前述したようなもっともらしい理由があるにせよ、オーバー・シュートの感が否めない。各相場とも、水準訂正の時間帯から日柄調整の時間帯に移行したと捉えるべきだろう。

もう一つの理由は、外為・株式市場が「アベノミクス」による脱デフレ達成を、すでにあらかた織り込んでしまったと見られる点だ。11年3月の東日本大震災後、わが国経済実体は景気低迷とデフレ傾向をかこってきたが、今般、ドル円相場と日経平均株価が震災前の円安・株高水準を回復し、脱デフレ達成の先取りを体現している。そのように円安・株高が一服となれば、長期金利の上昇にも自ずと歯止めがかかるだろう。

こうしたなか、各市場は今後、“脱デフレの実現性”を慎重に見極めていくことになる。

それが(1)見込みどおりならば、各相場は横ばい圏での推移を続けるだろう。(2)見込み以上に順調な脱デフレのパスが見えてきた場合には、リフレ期待がインフレ期待に変わり、前述したメカニズムによって一段の円安・株高・債券安が進行することになる。(3)逆に、脱デフレのパスがいつまでも見えてこない場合には、リフレ期待が剥落してしまい、オーバー・シュートの反動も手伝って、市場は反転し、円高・株安・債券高へと舞い戻ることになる。

ここまでの「失われた20年」では、「見込み違い」「期待はずれ」という(3)のケースが繰り返されてきた。果たして今回はいかに?  カギはひとえに「アベノミクス」の実現性と実効性が握っている。

石井 純 三菱UFJモルガン・スタンレー証券チーフ債券ストラテジスト

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いしい じゅん

いしい・じゅん●1986年東北大学法学部卒、三菱銀行(当時)入行、89年から資金証券部で公共債ディーラー・セールス、債券リサーチを担当、95年三菱ダイヤモンド証券(当時)に出向し、チーフマーケットエコノミストなどを経て、2001年(当時東京三菱証券)から現職。機関投資家の人気ランキングで常に上位。

 

 

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